基本を極めるビジネスの心得
相手に対する思いやりに満ちた「伝え方」のマナー
「ホウ・レン・ソウ」とは「報告」「連絡」「相談」の略。
ビジネスパーソンにとっては当たり前のことかもしれませんが、何事にも基本が大切です。
ただ「伝える」だけでなく、「伝わる」こと、それが報告のマナーになります。
「報告」には、相手が理解しているかどうか、思いやりに満ちたマナーが不可欠です。
 ビジネスパーソンにとって常識である「ホウ・レン・ソウ」の第一条件は「報告」です。そもそも報告とは、「ある任務を与えられたものが、その遂行の状況・結果について述べること(出典:広辞苑)」を意味する言葉。ビジネスでは、ミッションを与えられた部下が上長や先輩に対して、結果や経過をスムーズに知らせるために用います。しかし、ただ「伝える」だけでは報告にはならないことを覚えておきましょう。「伝わる」ことこそ重要なビジネスマナーなのです。
 報告のマナーの基本は迅速さです。「成約が取れてから報告したい」「今のままではクレームが自分の責任になってしまうかも」など、誰でもついネガティブに考えがちですが、上司やクライアントも軌道修正が可能な「進捗状況」を知りたいと考えています。報告は事後報告ではなく、むしろ事前報告が大切。「進捗で恐縮なのですが」と簡単なビジネスの枕言葉や、クッションフレーズを添えて報告しましょう。
 上司への報告では他人を介してではなく、極力指示を出した本人に直接報告するのがベストです。しかし団塊世代がリタイアし始めた今、中間管理職のビジネスパーソンには責任が集中し多忙を極めています。忙しい人に短時間で要点を伝えるビジネストークを欧米では「エレベーター・トーク」と言います。「今、お時間よろしいでしょうか」と一声かけ、状況を確認した上でまずは結論から、すばやく、分かりやすく、少なくとも1分以内に説明します。そうすれば、どんなに忙しい状況でも耳を貸さないビジネスパーソンはいないはずです。
 クレームの報告については、全業務上における最優先事項です。対応策の前提として、クレームはあなた一人の問題ではないことをしっかりと認識しなければなりません。お客様の反応の中で最も怖いのは沈黙であり、何も言わず商品やサービスから離れていくことこそ危険信号です。その点クレームは、「この商品・サービスを改善して欲しい」という明確な意思表示であり、多くはお客様の声を誠実に傾聴することでほぼ解決します。ただし、明らかなクレーマーや、延々と続く長い電話対応によっては日常業務に著しい障害をきたす場合もあります。もし自身の手に負えないケースが発生した場合は、速やかに先輩社員や上長へ現状を報告しましょう。例えば、電話対応では「担当のものに替わりますので少々お待ちください」「お電話代も恐縮ですので担当のものから折り返し差し上げます」と上長へ取次ぐスキームを事前に社内で作っておくとスムーズです。また、職場のチームプレーを促すこともビジネスパーソンとして必要なスキルです。ちなみに、低い声のトーンで落ち着いてしっかりとした口調で話すと、感情的になったお客様の興奮も収まりやすくなるので心がけるとよいでしょう。
 あらゆる報告において大切なのは思いやりのコミュケーションであり、優先順位が高ければ高いほど、面と向かった報告がよいとされています。相手の状況を見た上で最適な手段(電話・メモ・メール)を駆使しましょう。その際は、常に相手の立場に立った最適なコミュニケーション方法を想定することが大切です。
 ビジネスマナーは掛け算です。対応次第では日々積み重ねてきたものがゼロにもなり、また、何倍にすることもできます。日頃から細心の注意を払い、その成果をキャリアにして成長していきましょう。
●奉行EXPRESS 2010年秋号より