基本を極めるビジネスの心得
状況と相手によって使い分けが必要な頼み方のマナー
仕事を依頼する時は、心配りと頼み方の使い分けが必要です。
というのも、「今、依頼しても大丈夫なのかどうか」「緊急な案件か余裕のある案件か」など、
どのような立場の人に依頼するかによって快く承諾してくれる「ツボ」が異なるからです。
状況と相手に応じた「頼み方のマナー」を知っておけば、業務を円滑に進めることができるでしょう。
 仕事を依頼する場合、相手が誰であっても命令口調ではなく「〜していただけませんか」という依頼口調に変換して伝えることが基本です。相手が忙しくしている場合、それでもその人に依頼しなければいけないのか、あるいは他の人でもいいのかを検討します。相手の状況がわからない場合は、相手が部下や同僚なら「今、忙しい?」、相手が上司なら「今、少しお時間をいただけますでしょうか」など、相手の現状や都合を聞くことが先決です。
 緊急な仕事を依頼するなら、「今取り組んでいる仕事よりもこの案件を最優先していただけませんか。なぜならこの案件はスケジュールが迫っており、会社にとって重要だからです」と言って業務の優先順位を明確にし、依頼する仕事の重要さを伝え、緊急ではない案件なら「今取り組んでいる仕事が一段落してからで結構ですから」と伝えるか、「○日の○時までに」など余裕のある締め切りを提示するとよいでしょう。
 どのような立場の人に依頼するかによって頼み方も異なります。相手が年上・年下にかかわらず上司の場合は「〜願えませんでしょうか」「ご配慮いただけないでしょうか」など敬語を用いて謙虚な態度で依頼し、「自分の手には負えないので、お力添えください」と困っていることを素直に伝えましょう。一方、自分より年齢が上の部下に対しては、年上の人に配慮する言葉が必要です。ベテラン社員にとって年下の上司から命令されるとプライドが傷つけられることもあります。「ぜひとも○○さんのご協力が必要です」など名指しで頼むと相手を信頼している証となり、相手のプライドも保たれます。
 新人に何かを依頼する際に注意したいのは、頭ごなしに命令しないことです。まず、その仕事がどうして重要なのか、その仕事が全体に占める位置などをわかりやすく説明して理解を促すことが肝心です。「この仕事はすべての業務の基本でスキルアップに欠かせない」と言葉を添えれば、モチベーションアップにつながります。
 派遣社員やパートタイマーへの依頼は、社員以上に言葉を選びましょう。相手の都合を尋ね、「○日までに○○を仕上げてもらいたいのですが、お願いしてもいいですか」と打診するのがよいでしょう。
 メールで頼む場合には、間違っても「お願いしま〜す」など、しゃべり言葉は使わないこと。メールとはいえビジネス文書なので「ご一考いただければ幸いです」「切にお願い申し上げます」など、敬語を用いてきちんと依頼するのがメールでの頼み方のマナーです。
 依頼を断わられたときの返答も大切です。相手が上司なら「無理なお願いを差し上げ、失礼しました。ありがとうございました」とお礼を述べます。相手が部下の場合は、断わる理由を聞いたうえで「それなら仕方ありませんね。次回はよろしくお願いします」など冷静に対応し、感情的な態度にならないよう注意しましょう。
 依頼後のフォローもマナーのひとつです。時折、笑顔で「何か問題はないですか」と声をかけ、依頼した仕事が終了した際には、「○○さんが引き受けてくれて助かりました」「急な仕事で大変だったでしょう。お疲れ様でした」など、必ずねぎらいの言葉や感謝の言葉をかけましょう。そうすれば信頼感も増し、仕事場の雰囲気もよくなるはずです。
●奉行EXPRESS 2010年夏号より