基本を極めるビジネスの心得
ビジネスパーソンに欠かせない危機管理意識〜地震編〜
地震に対するリスクマネジメントのポイントは、「損失の拡大を最小限にすること」です。
しかし、漠然としていてリアリティがありません。
そこで、ビジネスパーソンの基本マナーである「他人を思いやる」という視点を盛り込み、各自が心がけるべき対策を紹介します。
あなたの危機管理意識をチェックしてみてください。
 リスクマネジメントとは、企業がビジネス活動において直面するあらゆるリスクの特定、評価、対応を含めた管理活動のこと。分かりやすくいえば、損失の発生を未然に防ぐ努力と、仮に損失が発生した場合でも、その損失の拡大を最小限にする努力のことです。ただし、数あるリスクのうち自然災害は、企業努力で未然に防げるものではありません。大地震は「いつ起こるかはわからないが、いつかは起こる」ものなので、地震対策は常に「受動的」です。そこで必要なのが、各自が危機管理意識を高めることです。ビルの構造や階数によって被害は異なりますが、震度6直下型地震の場合、人は立っていられなくなります。オフィスではキャビネットが転倒し、外壁や窓ガラスが散乱します。
 リスクマネジメントの観点からすれば、地震対策とは「仮に地震が発生した場合、被害を少なくする合理的な対策を講じること」になります。それでは、社員にはどのような心構えが必要で、また、各自で取り組める対策にはどんなものがあるのでしょうか。
 ビジネスマナーは、相手を思いやる気持ちから始まります。その観点から突き詰めれば、地震に対する各自の危機管理意識とは、被害の大きさを想像し、被害にあうかもしれない社員全員に思いやりを持つことから芽生えるものだといえるでしょう。地震の際に最優先されるのは、自身を含めた社員の安全確保です。オフィスやOA機器の代替はいくらでも可能ですが、唯一無二の人命にスペアはありません。会社の利益を生み出す源である社員が亡くなってしまっては、企業の復興はできません。「元も子もない」のです。
 社員が遭遇する可能性のある被害は、什器・機器の転倒や落下によるケガ、窓ガラスの散乱によるケガ、慌てて逃げる際に転倒したり、激突したりして起こるケガです。さらに、地上を目指す人が階段を目指して殺到し、将棋倒しになるという二次被害が考えられます。
 ビジネスパーソンが自主的にできる対策の一部を紹介します。実際にできているかどうか、各自チェックしてみてください。

□ 配布されている「地震対策マニュアル」を読んでいる。
□ 転倒しそうな什器・機器は固定してある。
□ 落下危険物は撤去し、引き出しが飛び出さないようにしている。
□ ガラスの飛散防止に取り組んでいる。
□ 地震の際に被害が最小限ですむよう、オフィスのレイアウトを見直した。
□ 避難経路の確認を徹底させている。
□ 避難時の指揮系統が確立されている。
□ 災害時の連絡の仕方、連絡網が確立している。
□ 防災グッズを常備している。
□ 非常食を常備している。

 さて、皆さんのチェック状況はいかがでしたか。私は客室乗務員時代、あってはならない飛行機事故を想定して定期的に救難訓練を行っていました。業務を通じて分かったことは、常に事故を想定したイメージトレーニングができていないと咄嗟に体は動かないということ。災害時をイメージすることは難しいものですが、各人が危機管理意識を高めることは、不確実性の高い現代社会では必要不可欠。これも広義のビジネスマナーと言えるでしょう。
●奉行EXPRESS 2009年秋号より