会計ひろば
電子申告は時代の必然
 平成19年度税制改正では減価償却制度を中心に大幅な改正が行われました。この改正では企業のIT化推進が期待されていますが、IT機器やシステムの導入に際しては「システムありき」ではなく、業務の効率化・経営判断の迅速化が図れる仕組みづくりに留意していただきたいと思います。
近年は大企業を中心に好況が続いていますが、全国約280万の普通法人のうち7割を超える200万社が赤字経営であるといわれています。当社のお客様にも経営改善に向けて努力されている企業が多くいらっしゃいますし、また、平成18年施行の新会社法によって企業の株式政策・資本政策などが複雑化し、高度な専門知識が要求されるようになりました。
このような時代背景の中で会計事務所には、従来の記帳代行・決算報告書の作成という役割に加え、企業のパートナーとしての経営コンサルティングという役割が必要になってきているのではないでしょうか。
武内総合会計では平成19年から顧問先すべてのお客様(法人・個人)の申告を電子化しています。これは平成19年1月から納税者の電子証明が不要になったことや、今回の税制改正での5,000円の税額控除や添付書類の省略(対象は平成20年1月から)といった、行政による規制緩和で社会的環境が整ったことも大きな要因です。ただ当社としては以前から「会計業務の自計化」を推進していましたので、「全件電子申告」はその流れから導き出された必然的な結論なのだと考えています。
全件電子申告を達成
 電子申告は登録手続きも含めて特別に複雑な作業はありません。もちろんお客様には「手間がかかるのでは?」「機密保持は大丈夫なのか?」等の不安がありましたが、事前に資料をお渡してご説明することで、お客様の不安を解消し、「(電子申告を)するか、しないか」という選択ではなく、電子申告は必然なのだという意識を持っていただきました。結果としてお客様からは電子申告についてご理解をいただけましたので、移行はスムーズに行えましたが、むしろ事前準備や登録手続きなど、社内調整に腐心しました。
電子申告を行う以上は、今年は消費税だけを試してみるとか、半分くらいのお客様でなどという中途半端な形では無意味だと考え、私が率先して行いました。所員も業務を進めると簡単であることがわかり、全社での電子申告に対するモチベーションとスキルが一気に向上しました。その結果、今では「電子申告=武内総合会計のスタンダード」となっています。
これは2年前の数値ですが、韓国では法人税の電子申告利用率が97.1%に上っています。同年の比較で日本はわずか0.3%。これは行政の対策が遅れたこともありますが、会計事務所がなかなか電子申告に踏み切らなかったことも大きな要因です。電子申告をするかしないかは、お客様よりも会計事務所にかかっているのです。その意味で今年度の税制改革で5,000円の税額控除が認められたのは、電子申告普及の一つの起爆剤になるのではと期待しています。
自計化は「適切な経営判断」の手段にすぎない
 全件電子申告もそうですが、当社ではお客様に会計業務の自計化を強くお勧めしています。
自計化は単に今まで伝票や帳簿に記載していたものをPCで行うという、業務の合理化推進のみを目的とするものではありません。あくまでも経営者が月次の数字をリアルタイムに把握することで、迅速な予実管理と適切な経営判断を行ってもらうための手段なのです。
当社では創業以来の基本業務である「月次巡回監査」で毎月お客様を訪問し、業績の解説と経営改善のお手伝いをしています。
さらに過去の決算書を参考にして現在の問題点を洗い出し、目標・ビジョンを策定する当社の「決算書診断システム」と、それを基に経営計画の立案や予実管理を行う「経営計画策定システム」というサービスをご提供しています。しかし、このためにはリアルタイムな業績の把握が必要です。自計化はあくまでもそのための手段にすぎません。
お客様が当社に期待されているのは、経営コンサルティングのプロ集団として、出て来たリアルタイムな数字や情報をいかに経営に反映できるかといった適切なアドバイスだと思います。そんなお客様の要望にお応えするためにも、今後も自計化や電子申告に留まらず、お客様のお役に立てるサポートができるよう、積極的できめ細かいサービスのご提供を目指してまいります。
Vol.06
2007年春号
企業を支援し、活動する職業会計人を迎え、時流にあわせた業務に関する話題についてポイントや詳しく知りたい部分を毎回紹介していきます。
武内 俊造氏
代表社員
税理士・ファイナンシャルプランナー
武内 俊造氏
(たけうちしゅんぞう)
税理士法人武内総合会計

●税理士法人武内総合会計

住所:福岡市中央区舞鶴2丁目8番20号武内ビル
TEL:092-781-0251
ホームページ:http://www.takeuchi-kaikei.com/

昭和59年の創立以来、毎月顧問先を訪問する「月次巡回監査」を行い、きめ細かい税務コンサルティングを実施。一方で会計業務の自計化、電子申告への切り替えなど、時流に沿った改革を積極的に断行し、「税金や経営で困っている人にできるだけ多く貢献したい」という想いから、常に顧問先の立場に立った積極的なサービスを展開。既存顧問先からの紹介を主として、新規顧客が5年間連続して100件以上増加するなど、積極的できめ細かいサービスが高い評価を受ける。

●奉行EXPRESS 2007年夏号より