頭のスパイス 心のビタミン BOOKS

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ビジネスに役立つ選りすぐりの一冊
田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」

著者:渡邉格
講談社
1,680円(税込)
 岡山県の山の中、誰もが「辺境」と呼びそうな田舎町に、ある一軒のパン屋が店を構えています。それが「タルマーリー」です。本書は、著者であるタルマーリーの店主が「田舎のパン屋」を目指した経緯と、彼がたどり着いた店の看板商品である「酒種パン」を成功させるまでの試行錯誤の日々が書かれています。
 著者が食に興味を持ったきっかけは、学者である父親の研究休暇に同行して滞在したハンガリーでの体験でした。それまで何の目標もなしに気ままに暮らしをしていた著者でしたが、帰国後、一念発起して25歳の時に大学に入学。卒業後は有機農産物の卸販売会社に就職します。しかし、入社した会社は産地偽装や不正を行うトンデモな会社。そんな経験から、「小さくてもほんとうのことがしたい」と思い始めた彼が出会ったのが、パン、そして“菌”でした。
 原料高という問題に突き当たった時に読んだカール・マルクスの考えを、パン屋での労働に当てはめ、働くこと、お金を稼ぐこと、商売をすることを紹介しながら、経済の仕組みを解説する本書。経済学とビジネスを同時に学べる一冊です。
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疲れた心を満たす良質の一冊
ユニコーン ジョルジュ・サンドの遺言

著者:原田マハ
NHK出版
1,365円(税込)
 本書を手に取り最初に目を引くのが、巻頭を飾るタピスリー(織物)の写真です。凛とした表情の高貴な貴婦人と、両脇に座る雄々しくも優しげな一角獣とライオン、布いっぱいに散りばめられた無数の木花、そして彼らを囲む個性的な小動物。華やかなモチーフと細やかな綴織が醸し出す雰囲気に心を奪われます。
 本書は、このタピスリーに魅せられた一人、フランスの女流作家ジョルジュ・サンドの経験を物語にしています。
 新進気鋭の女流作家として文壇の注目を集めていたサンドは、1837年春、子どもたちとともに、彼女の作品の愛読者であったポーリーヌ・ド・カルボニエールの城を訪ねます。カルボニエール家は十五世紀から続く名門貴族。ポーリーヌはその一族最後の跡継ぎでした。サンドが城に足を踏み入れた瞬間、驚いたのは壁に飾られた見事なまでのタピスリーの数々。恐ろしいほど美しく、惹きつけて離さないその作品に、彼女は次第に取りつかれ、意味深な夢を見続けることになります。
 サンドの遺言「私の唯一の望み」は果たされたのか、タピスリーの行方は――。想像をかき立てられる一冊です。
年間ベストセラー 2012年12月〜2013年11月 トーハン調べ
    ■単行本・文芸
  • 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年[村上春樹/文藝春秋]
  • 海賊とよばれた男(上・下)[百田尚樹/講談社]
  • ロスジェネの逆襲[池井戸潤/ダイヤモンド社]
  • ホテルローヤル[桜木紫乃/集英社]
  • 謎解きはディナーのあとで(3)[東川篤哉/小学館]
    ■単行本・ビジネス
  • スタンフォードの自分を変える教室[ケリー・マクゴニガル、神崎朗子 訳/大和書房]
  • 伝え方が9割[佐々木圭一/ダイヤモンド社]
  • 雑談力が上がる話し方 30秒でうちとける会話のルール[齋藤 孝/ダイヤモンド社]
  • 夢をかなえるゾウ(2) ガネーシャと貧乏神[水野敬也/飛鳥新社]
  • 統計学が最強の学問である データ社会を生き抜くための武器と教養[西内 啓/ダイヤモンド社]
●奉行EXPRESS 2014年冬号より [→目次へ戻る]