岡山県の山の中、誰もが「辺境」と呼びそうな田舎町に、ある一軒のパン屋が店を構えています。それが「タルマーリー」です。本書は、著者であるタルマーリーの店主が「田舎のパン屋」を目指した経緯と、彼がたどり着いた店の看板商品である「酒種パン」を成功させるまでの試行錯誤の日々が書かれています。
著者が食に興味を持ったきっかけは、学者である父親の研究休暇に同行して滞在したハンガリーでの体験でした。それまで何の目標もなしに気ままに暮らしをしていた著者でしたが、帰国後、一念発起して25歳の時に大学に入学。卒業後は有機農産物の卸販売会社に就職します。しかし、入社した会社は産地偽装や不正を行うトンデモな会社。そんな経験から、「小さくてもほんとうのことがしたい」と思い始めた彼が出会ったのが、パン、そして“菌”でした。
原料高という問題に突き当たった時に読んだカール・マルクスの考えを、パン屋での労働に当てはめ、働くこと、お金を稼ぐこと、商売をすることを紹介しながら、経済の仕組みを解説する本書。経済学とビジネスを同時に学べる一冊です。
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