連載企画1:クラウドとオンプレミス、広がる選択肢。企業向けサーバの現状を知る!
多岐に渡る中から自社に適したサーバを選び出すために
 サーバとは、端的に言うと「サービスを提供するコンピュータ」です。代表的なサーバに、メールの送受信サービスを提供する「メールサーバ」、インターネットのウェブページ閲覧に関するサービスを提供する「ウェブサーバ」、プリンタを共有するサービスを提供する「プリントサーバ」などがあります。最近では、音声や動画配信サービスをよく目にするようになりましたが、これも「ストリーミングサーバ」などのサーバが活躍しています。メールもインターネットもプリンタも、仕事に欠かせないサービスです。普段サーバの存在を意識していなくても、皆さんとサーバは切っても切れない縁でつながっているのです。
image1  サーバを構築するメリットに「集中管理」と「安定したサービスの提供」が挙げられます。例えば、作成したあるファイルについて考えてみましょう。それぞれのクライアント(サービスを受けるコンピュータ)で管理した場合、複数の人とデータを共有するのに毎回メールで送受信したり、大事なファイルをうっかり消去してしまったり、データを今すぐ見たいのに、手元に届くまで時間がかかったりと、様々な不都合が生じます。それを解消してくれるのがサーバなのです。データをサーバにまとめて保存することができ、集中管理もしやすくなり、ユーザーはいつでもサービスを受けられます。ちなみにサーバは24時間365日稼働が基本です。
 規模を問わず、サーバは企業にとって欠かせない存在です。サービスの性能は年々高まり、サービスは細分化され、各社各様、様々な特長を有してリリースされています。これまで主流だった「オンプレミス」(ここでは物理サーバの自社運用を指す)に加えて、トレンドが「クラウド」(ここではパブリッククラウドを指す)にシフトしてきているのも見逃せません。クラウドとオンプレミスにはそれぞれメリット・デメリットがあるので、それらを見極めて自社に適したサーバを選ぶことが、サーバ導入成功の秘訣と言えます。
クライアント他のコンピュータやソフトウェアからサービスを受ける側のコンピュータまたはソフトウエア。提供する側がサーバです。
物理サーバ物理的実体としてのサーバそのもののこと。
オンプレミス企業が情報システムの配置と運用を自社の管理下にある設備で行うこと。自社運用。クラウドなどインターネットを通じた社外のシステムやサービスの利用形態が増えたことで、それらと区別するために呼ばれるようになりました。
クラウド(クラウドコンピューティング)インターネット経由で提供されるコンピュータ資源やサービスを利用することで、様々な処理や機能を実現すること。
パブリッククラウドデータセンターに置かれたコンピュータ資源を共有し、不特定多数で共有する利用実態のこと。クラウドの一般的な利用形態。
クラウド or オンプレミス、どちらが賢い選択か
 サーバの導入が決まった後、最初に投げかけられるのが「クラウドとオンプレミスのどちらの運用方法を採用するか」という問いです。クラウドとオンプレミスにはメリット・デメリットがあり、どちらが優れていて、どちらが劣っているということはありません。「今はクラウドが流行っているから」や「今までオンプレミスだったから」などとは考えず、しっかりと自社の意図に合ったサーバを選ぶことが求められます。

データセンターに設置されたサーバを不特定多数の利用者で共有し、必要に応じてインターネットを経由してサービスを利用するクラウド。現在、国内外のサービス事業者(クラウドプロバイダー)が様々なプランでサービスを提供しています。

既に構築されたサービスを利用するため、短期導入が可能。比較的簡単に利用設定ができる。
利用期間やクライアント数によってプランが設定されている場合が多く、導入・運用コストを抑えられる。
あらかじめストレージ機能がついていたり、様々なサービスをオプションで組み合わせられる。
ハードウェアを所有する必要がなく、データセンターにて専門家による保守・管理が行われているため、自社の負担が少ない。
災害に対する対応に優れた設備に設置されているデータセンターであれば、企業のBCPに活用できる。 など

データセンターが日本でない場合があり、サーバダウン時に不安がある。
不特定多数の人が利用するため、アクセス数によって処理速度が遅くなる可能性がある。
クラウドプロバイダーが海外企業の場合、外貨建てで支払うケースもあり、為替に左右されたり、費用の管理がしづらくなる。また、日本語の情報が十分でないこともある。 など

サーバベンダーが販売するサーバ本体を購入後、本体を自社内に設置。自社資源として自社で構築・運用するのがオンプレミスです。自社独自に構築できることや、限られた範囲内の閉鎖的なネットワークで運用されます。

外部サービスやアプリケーションとの連携があらかじめ保証されていることがあり、業務を安定的に行える。
自社で構築するため、設計に柔軟性を持たせられる。
自社内・企業内の閉鎖的なネットワークで運用するので外部との接触がなく、安全性を保つことができる。
目の届く範囲に設置することができる。
限られたネットワークで利用されていることにより、不具合の原因を特定しやすくなる。
従量制に比べ、アプリケーションやクライアント数が増えた場合に発生するコストを抑えることができる。 など

専門的な知識を持った専任者の採用・配置が必要になることもあり、採用・教育にコストがかかる。
事業所にサーバを設置するためのスペースを確保する必要がある。
災害時に社屋の倒壊などでサーバが破損する危険性があり、BCP対策に不安がある。
導入や設定、使用するサービスやアプリケーションの確認作業があり、稼働までに時間と労力の負担がある。 など
サーバのトレンドを把握する
⇒ビジネスを支えているサーバは、企業を取り巻く環境の最先端にあると言えます。サーバのトレンドを把握することでITに関する最新情報だけでなく、ビジネス全般のトレンドをつかむことができます。
自社の考え・環境とサーバのマッチングを行う
⇒自社が描いている目標を達成するためにサーバをどのように活用するのか、サーバの運用を継続させるための環境(財務面や物理的スペースなど)の状況はどうなっているのかをしっかりと考えます。
サーバを“戦略ツール”として捉える
⇒サーバは単なる道具ではなく、使い方次第で“ブレーン”となります。サーバ導入を長期的な視点で考え、作業を処理するツールとしてだけでなく、戦略的に使いこなすことが大切です。
クラウドとオンプレミスのメリット・デメリットを確認する
⇒現在、サーバの導入スタイルは大きく分けてクラウドとオンプレミスがあります。それぞれの特徴を確認し、自社に最適なサーバを選びましょう。
●奉行EXPRESS 2016年春号より [→目次へ戻る]