健康でいこう!
時間や温度を意識することで入浴をより効果的に 仕事で疲れた心と頭のリフレッシュには温泉も有効
“お風呂に入ること”は日常生活に欠かせない日課の一つで、入浴には体を清潔に保つだけでなく、血行促進で疲労を回復したり、気分を落ち着かせてくれるなどさまざまな効果があります。普段から健康を意識した入浴を心がけることで、忙しいビジネスパーソンにとって有意義な時間に変化します。 日本健康開発財団研究調査部主任研究員
http://www.jph-ri.or.jp/
後藤 康彰(Yasuaki Goto)さん
日本人の長寿要因の一つを「日本独自の入浴習慣」と考え、入浴・温泉文化の普及に積極的に取り組む。また、日本の入力スタイルについて調査・研究を行うほか、中国の気やインドのヨガと同様、世界的に周知させることを目標としている。
仕事前は熱めのお湯で交感神経を刺激
ただし習慣化する高温度の入浴はリスクの元
 日本には昔、みそぎという儀式があり、“水を浴びる”という行為が特別な意味をもっていました。このような文化は世界各国で見られ、今日でもガンジス川の沐浴はとても有名です。こうして見ると、入浴には体を清潔に保つ衛生的な面だけでなく、心を清める心理的な作用もあるようです。また、ドイツ・イタリアなどでは、温泉療養が健康保険の対象になっているなど、現代でも医学的に用いている国があります。
イメージ1  現在の日本ではほとんどの家庭にバスタブがあるので、湯治場に行かなくても温度や時間を意識するだけで、より有効的な入浴にすることができます。活動を開始する前は少し熱めの42℃前後のお湯で入浴するのが効果的です。皮膚にある侵害受容器等が刺激され交感神経系の働きが高まり目も冴え、通勤前に浴びれば仕事前に頭がスッキリします。この場合は湯船に浸からず5〜10分間のシャワーでもかまいません。
 一方、就寝前は少しぬるめの38℃前後のお湯に10〜20分程度ゆっくりと浸かるのが効果的です。次第に手足がぽかぽかと温かくなり熱の放散が始まります。体温を下げようとする働きによって副交感神経が優位になり寝つきがよくなります。入浴後はすぐに布団に入らず、湯冷めしない程度に時間を置きましょう。
 ここで注意したいのが、高温度の入浴が習慣化することです。「熱い」という刺激は脳内でβ-エンドルフィンという興奮や快感をもたらす脳内麻薬を分泌します。そのため、アルコールで脱水状態にあったり、持病で体が弱くなっていても高温度の湯船に入ろうとしてしまいます。そうなると入浴中の事故死や病死のリスクも高まるので、入浴と上手に付き合うためにも日頃から温度や時間を気にすることが大切です。
気持ちいいと感じる入浴スタイルがベスト
ストレスを感じる新年度には温泉が効果的
 人間関係や多忙なスケジュールに追われるビジネスパーソンのストレス解消法にも、入浴が効果を発揮します。前述のとおり、ぬるめの湯船は体が休まるのでストレス解消にもつながりますが、一番よい方法は自分の好きな入浴スタイルを取り入れることです。半身浴や足湯など何でもかまいません。入浴剤を入れてもよいでしょう。要は、自分の心を開放できる状況を作ることなのです。
 湯船の中でのマッサージもお勧めです。お風呂の中では体が温まっていて動きやすく、浮力によって普段より楽な動作が可能です。腰をひねったり、膝を胸に抱えて股関節を柔らかくするとよいでしょう。立ち仕事や外回りが多い人はふくらはぎや太ももを、デスクワークやパソコン作業が多い人は腕や目の周りのコリをそれぞれ揉みほぐしてみてくださいね。
イメージ2  入浴後の足裏マッサージも効果的です。入浴中と同様に筋肉の緊張がゆるんだ状態なので疲労回復が早まります。マッサージ方法は親指で足の裏を揉むことから始めます。硬くなっている場合は疲れている証拠です。念入りに行いましょう。次は足裏をこぶしでたたき緊張を取り除きます。緊張がとれたら、足の指を伸ばして引っ張りながら回し、最後は足の指の付け根を押し曲げます。この動作を10分ほど丁寧に行えば、リラックス効果も高まります。
 時には温泉に出かけて仕事から解放されるのもいいでしょう。特に新年度は昇進や新規プロジェクトなど業務に大きな変化があり、疲れも溜まりやすい時期です。広いお風呂でのんびりすれば、自然と新しいアイデアも浮かんでくるでしょう。日本健康開発財団では、温泉と健康に関するさまざまな情報を提供しています。また、ホームページでは簡単に受検できる「温泉健康検定」を紹介しています。毎日の入浴を通じて“健康力”を高めてみてはいかがでしょうか。
●奉行EXPRESS 2010年春号より [→目次へ戻る]