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●第四回
 奉行シリーズをお使いいただいている企業様へ、業務効率と業績向上へのヒントとして、今からできる「明日への一歩」をご提供している企業診断所。第四回は、企業におけるマネジメントシステムの支援を行う三優ビーディーオーコンサルティング株式会社の高瀬武夫さんに、企業のための人事評価制度についてお聞きしました。社員のモチベーションを高め、継続していくための正しい評価制度とはどのようなものなのでしょうか?
高瀬武夫 三優ビーディーオーコンサルティング株式会社 取締役
高瀬武夫(たかせたけお)
住宅設備機器メーカーに入社し営業職を経験後、平成元年三優ビーディーオーコンサルティング株式会社に入社。企業の成長を裏付ける「人と組織」を活性化させるマネジメントシステム構築に従事。経営目標を達成するための「仕事」を基軸に据えた評価制度、賃金制度、人材開発、組織開発等の再構築支援を行う。上場企業における企業研修も担当。
三優ビーディーオーコンサルティング株式会社
三優監査法人、三優税理士法人、三優ビーディーオーコンサルティング株式会社、3社でグループを形成し中堅・中小企業の成長支援を行う。主要ドメインは株式公開支援業務。コンサルティング領域は組織再編、事業承継、内部統制、人事制度、経営理念構築など幅広く展開。
URL http://www.bdo.or.jp/jpn/sbc/index.html
Q1 経営者は人材に関してどのような悩みを持っているのでしょうか?
 採用や育成、評価や賃金・退職金など様々な問題を抱えており、経営環境の変化に応じて問題の順位は入れ替わります。採用に関しては、2008年、2009年の売り手市場を背景に優先順位が高くなっています。その中でも、評価、処遇(賃金・賞与)、育成の3つの課題は常に上位を占めている課題です。
Q2 なぜ3つの課題が上位にランキングされるのでしょうか?
 この3つの要素は、社員の仕事ぶりを正しく観て評価し、公正に処遇に反映し、適確に人材育成に展開する、人事制度の基本フローの構成要素なのです。この基本フローが確立されなければ人材の定着・活性化もそして企業の成長発展も危うくなります。評価が上司の主観に依存したり、結果主義になり、適確な評価ができないと、本人はもちろん経営陣も納得がいかない人事制度になってしまいます。その結果、社員を育成しきれず「人材がいない」、「優れた人材が辞めてしまう」と悩んでしまうのです。
Q3 企業は何のために評価する必要があるのでしょうか?
 企業の経営活動とは、共通の目的・目標を達成するために行われ、社員にはそれぞれ共通の目的・目標を達成するための「期待される仕事」があります。評価制度とは、賃金や賞与に格差をつける査定をするだけではなく、経営目標達成のための「期待される仕事」に対する仕事ぶりをしっかりと観て、処遇と育成に反映することです。「期待される仕事」の達成状況を適正に把握し、ギャップ(知識、能力、経験など)を適確につかみ、人材育成に展開することが大切です。このように適確な評価制度は、人間本来の欲求である「承認欲求」と「自己成長」を確保し、社員のモチベーションを維持・向上させるためにも、経営目標を確実に達成するためにもとても重要となります。
Q4 評価の納得性が低いのは何故でしょうか?
 社員は生活の基盤である給与と承認欲求や自己成長に直結する評価に高い関心を持っています。評価に対する納得がいかない一番の理由は、「評価すべき評価対象と評価基準が曖昧であること」です。「何を観て評価しますか?」という質問に対して、経営者も社員も「仕事ぶりを観て評価する」と回答します。しかし、この「仕事」が明確に設計されていない場合が多く、「期待される仕事」とその達成度を測定する「評価基準」が曖昧であるため、「適正なフィードバックができない」、「人材育成に繋げられない」、「公正に処遇に反映できない」状態になってしまい、社員は評価に納得できなくなってしまうのです。そこで、経営目標を確実に達成するための「期待される仕事」を構築(エンジニアリング)し、「評価対象」と「評価基準」を明確にすることが求められます。
Q5 経営目標達成のための「期待される仕事」の構築は
どのように進めればよいのでしょうか?
 多くの企業は、中期経営計画書、事業計画書、経営方針書など3年前後の経営計画をまとめていると思われます。文書でない場合でも、経営者には事業の軸となる数値計画や戦略が存在しているはずです。「期待される仕事」の設計(図1)は、達成すべき経営目標を明確にすることから始まります。共通の目的・目標を経営者が明確にすることが第1ステップとなるのです。人事制度再構築のコンサルティングにおいても、経営目標が不明確な場合は、まず経営者と達成すべき経営目標について整理することから始めます。

「期待される仕事」の設計

 第2ステップは、明確化された経営目標を達成するため、各部門長が部門における達成すべき目標の設定と、目標達成の戦略および仕事の構築を行うことです。つまり、部門戦略構築→戦略実行の先行指標設定→先行指標達成のための仕事設計という流れです。このシナリオが描ければ、「期待される仕事」の設計精度は確保されます。
 第3ステップは、先行指標達成のための仕事を担当者ごとに割り振り、個人別の仕事として具体的に設計します。これが社員の「期待される仕事」になります。例えば、部門長にとっては、「部門戦略構築→先行指標の設定→仕事の設計をしっかり構築すること」が最も重要な「期待される仕事」となるのです。(図2:戦略業務・先行指標設定ガイドライン)

戦略業務・先行指標設定ガイドライン

 これまで述べてきた「期待される仕事」は「戦略業務」といえますが、それ以外にも「日常業務」があります。つまり、戦略業務の「種まき仕事」と日常業務の「刈り取り仕事」の両方が「期待される仕事」となるのです。「種まき仕事」と「刈り取り仕事」の構成割合は、上位職になるにつれ「種まき仕事」の割合が高くなります。「刈り取り仕事」に集中してしまっている上位職は、「期待される仕事」をしていないことになり評価が下がってしまいます。
Q6 評価に見合った賞与の具体的な分配方法には
どのようなものがありますか?
 賞与は賃金の後払い的要素も否定しきれませんが、本来は獲得成果の配分理論に基づき成果配分による分配をすべきです。つまり、獲得成果が確保されなければ配分できません。労働配分率などの経営管理指標に基づいて総額人件費を設定し、そこから月給や残業代、法定福利費などを支給します。その残りが賞与となるのです。
 この賞与原資の配分方法として、お勧めしたいのがポイント制です。これは等級別評価別にポイントを設定し、各人の評価に対応したポイントと各人の評価ポイントの累計により賞与原資を配分します(図3)。この方法は、賞与原資を1円も超えず、余さず分配することが可能です。なお、この等級別評価別のポイント化は退職金の算定にも応用することが可能です。ポイント化することにより、基本給との連動を断ち切り、「期待される仕事」の評価結果を基軸に退職金を算定することができます。

図3

今回の処方箋
ポイント制に対応した、
「人事奉行」「賃金改定オプション」「退職金管理オプション」
を是非ご活用ください。

詳細は、下記URLよりご確認ください。
解決のヒント

●奉行EXPRESSより