基本を極めるビジネスの心得
ビジネスパーソン必見! エレベーターピッチのマナーと活用
あなたにチャンスを与えてくれるビジネスパーソンやお客様は、
時間に追われる日々を過ごしています。
私たちがそんな彼らと会い、話をする機会を得たなら、用件や意思など、
伝えるべきことを限られた短い時間で伝えなくてはなりません。
時間にして15秒から長くて1分。そこで力を発揮するのが、
「エレベーターピッチ」と呼ばれるものです。
 たとえば、留守番電話のメッセージ録音。約20秒前後の録音時間内に、あなたは相手に伝えるべき用件をきちんと残せているでしょうか。短期記憶の保持時間の実験結果を表した「ブラウンピーターソンのパラダイム」によると、人間の記憶力は15秒を過ぎたあたりから減少していくそうで、その時間が長ければ長いほど、記憶は薄れていくと言われています。そう考えると、留守番電話に残した短いメッセージですら相手の記憶に残っているか疑わしいところです。どんなに素晴らしいことを話しても、時間が長すぎるとその話は相手の記憶から忘却の一途をたどるだけなのです。
 そこで身に付けたいのが、「エレベーターピッチ」です。これは1988年公開のハリウッド映画「ワーキング・ガール」の中で、窮地に陥った主人公が同じエレベーターに乗り合わせた人物に対して繰り広げた会話が元となり、アメリカに広まった話し方のことです。主人公はそのエレベーターに乗っている短い時間を使って、端的でわかりやすく、効果的な会話を披露し、それがきっかけで大逆転につなげていくというストーリーです。
 このエレベーターピッチで重要なのは、すべてを話しきることではありません。相手があなたと会話の中身に興味を抱き、「また会いたい」「続きを聞きたい」「斬新だなあ、興味がある」と思ってもらうことがポイントです。つまり、簡潔明瞭な「次につなげる話し方」が、エレベーターピッチということになります。これを身に付けると、会議やプレゼン、営業、スピーチ、報・連・相など、様々なビジネスシーンで役立ちます。また、相手の貴重な時間を奪わないという点でも必須のビジネスマナーといえるでしょう。
 あなたの周りを見渡してみてください。話がわかりやすい人というのは、難解な単語や横文字言葉を並べ立てたりはせず、わかりやすい言葉を用いて、短いセンテンスで話していることに気づくと思います。エレベーターピッチの習得法としては、まずこういった人たちの話し方をイメージしながら、報・連・相を15秒程度でまとめるあたりから練習し、実践してみるとよいでしょう。その時に、ピッチ用メモを作ることをおすすめします。ワンセンテンスで要旨、具体的なポイント3つ、まとめを作成します。文字数は、話すスピードによっても変わりますが、80文字程度です。
 私が普段から心がけているフレーズをご紹介しましょう。それは、「結論から申し上げると」「ズバリ〜です」「ポイントが3つございます」などというものです。短くまとまりやすくなるので、相手から「分かりやすい」とお褒めの言葉をいただくことも多く、その上、自分の頭の中も整理され一挙両得なのです。
 特に忙しそうな相手には、「1分で終わります」とゴールを告げてから話し始めると、耳を傾けていただける確率がグッと高まります。年配の方には、ダラダラと説明するより四文字熟語やことわざを用いた話し方も効果的です。伝えるべきことを伝えたら「この続きは…」とした上で、資料やウェブ誘導のQRコード等を手渡したり、次回のアポイントを取り付けるなどして、“次”につなげるようにします。このきっかけ作りのエレベーターピッチをマスターすると、目の前のチャンスがこれまで以上に増えていくことを実感するはずです。
●奉行EXPRESS 2013年秋号より