基本を極めるビジネスの心得
身につけたい真摯な態度と適切な言葉選び。クレームの初期対応マナー
ビジネスは「取引相手」があってこそ成立するものです。そして、その相手からクレームを受けることもあるでしょう。
重要なのは、クレームを受けた時の態度や言葉の使い方であり、いかに真摯に受け答えをするかです。
相手との関係性を良好に保つクレームの初期対応マナーをご紹介します。
 クレームとは、お客様があなたやあなたの会社・お店に対して何らかのネガティブな感情を抱いたり、腹を立てたりしている状態のことですが、決してあなたに対する個人攻撃が目的ではないことを理解しましょう。相手はあなたの会社やお店が提供する商品やサービスに腹を立て、然るべき対応を求めているのです。それを理解しておけば、感情的になって“逆ギレ”するようなこともありません。
 クレームは名誉挽回のチャンスを与えられているとも考えられます。相手が「もう二度と利用するものか」といった感情を抱けば、わざわざ時間と労力を使ってクレームを伝えてはこないはずです。あなたの会社やお店との関係を今後も継続していく意志があるからこそクレームを伝えてくれるのだと前向きに捉えましょう。しかし、中にはまったくの誤解で、反論したくなるようなケースもありますが、クレームを伝えられた段階ではNGです。まして「言い訳」は絶対にしないようにしましょう。
 では、クレームを伝えてきた相手とその先も良好な関係を継続していくには、どのような対応をすればよいのでしょうか。第一段階は、最後まで相手の話を聞くことです。この時に相槌としてよく使うのが、「おっしゃる通りです」「お気持ちよくわかります」といったフレーズです。もちろん、上辺だけの言葉や表情だと、「バカにしているのか」と思われるかもしれないので注意します。大切なのは、お客様の高ぶった感情を鎮静化させる声や表情です。通常よりも低めに、ゆっくりとしたペースで相槌を打ち、やや困った表情をします。心からの「共感」の空気の中で耳を傾けていると、徐々に相手の怒りが和らいでいきます。この段階ではお客様の感情にのみフォーカスします。
 第二段階では、「ご迷惑をおかけしないようメモを取らせていただきます」と一言断り、お客様の話しに耳を傾けながらメモを取ります。言葉の聞き違いや勘違いはお客様の怒りを増幅させてしまうので、それを回避するためにも、きちんと記録するようにしましょう。記録することでクレームの内容を理解・把握しやすくなりますし、場合によってはクレームを受け入れた後の反論の材料にもなります。ここでは、お客様の話しの内容にまで集中しましょう。
 相手のクレームをひと通り聞き終えた後に繰り出すキラーフレーズがあります。それは、「○○様、ご迷惑をおかけして申し訳ございません。この度の件に関して、場所を変えてきちんと対応をさせていただきたいと思います」と場所の移動を提案し、電話であれば、「××様、いったん電話を置かせていただき、お時間をいただいてもよろしいでしょうか。△△分以内にこちらからお電話いたします。お許しいただけますでしょうか」とインターバルを設けるフレーズです。時間と空間の変化が怒りをクールダウンさせ、言いたいことを言い終えた相手は落ち着きを取り戻します。ただし、あまり時間を空けすぎてしまうと火に油を注いでしまうので、「再度連絡を入れるのはいつ頃か」をあらかじめ伝えたうえで、なるべく早く対応しましょう。
 ここで注意したいのが、クレームを受けた時はそれを受け入れ、共感し、お詫びをしても、決して「すべて当社の責任です」とは言わないことです。クレームの中身を詳細に分析してみないことには、本当に「すべて当社の責任」かどうかわからないからです。それを相手の怒りを鎮めたい一心だけで無責任に全面謝罪をしてしまっては、後々大きなトラブルを招きかねません。
●奉行EXPRESS 2013年夏号より