基本を極めるビジネスの心得
正しい「敬語」使いが円満ビジネスの第一歩(前編)
一番間違いやすいのは社内=身内への敬語です
2006年5月を予定として新会社法が施行されますが、これにより起業が盛んになることが予想されます。施行前にあった「最低資本金制度」が撤廃されることで、「資本金が1円でも設立できる」ようになるからです。株式会社が多様化され、新しい組織形態も誕生するため、企業の形態や規模、業務内容などにより様々な会社が生まれることでしょう。
今、街には間違った敬語が氾濫しています。飲食店で接客する人が「…以上でよろしかったでしょうか」というのは代表的な例ですね。「教育を受けていないんだな」ということがわかる小さな間違いに、雇い主の品性までが表れる気がします。敬語以前に「ありがとうございます」という言葉ひとつに心がこもっていないことも多いですね。
会社で働く若い人の中で一番気になるのは、外部の人に対して自分の上司に敬語を使ってしまうパターン。これは40代でも間違っている人がいます。「上司は偉いもの」という考えがあるのは結構なのですが、外部のお客様をまず立てるのが順序。「先ほど○○部長がおっしゃいましたように、私共は…」などと言っては、部長に恥をかかせてしまいます。この場合は「先ほど部長の○○が申しましたように」が正しい使い方です。
本来「部長」というのも敬称ですので、外部の人に対しては「○○部長」というのも間違い。とはいえ、役職を明らかにしたほうが会話がスムーズに進むことも多いですし、同姓の方がいる場合もありますから「部長の○○」という言い方をするのが一般的に使いやすいでしょう。
もう一つ、ビジネス敬語のレッスンで若い社員の方にこんな質問を受けたことがあります。「社内に部長と課長がいたとき、部長に対して課長のことをどういえばいいのでしょうか」。日本人らしい気遣いがいっぱいの疑問です。
この場合、若い社員にとっては二人とも尊敬語を使う存在。「けれど課長は部長よりも下だから下げるべき?」と、彼は思ったのでしょう。しかし答えは両方に一律に敬語。つまり○○部長に「▲▲課長はどこにいるかな」と尋ねられたら「▲▲課長は会議室にいらっしゃいます」でよいのです。課長を下にしなくてはなどと考え過ぎて「▲▲課長は会議室におります」では、失礼な人になってしまいます。
つまり敬語とは、使う人自身の心の位置。相手を上げる、自分を下げる、自分がまず下にいる心があれば、間違いはなくなります。
ビジネスの心得
●奉行EXPRESS 2007年夏号より