ASOSのひろば
医療介護特化型で事業を展開
法律を学び、適切な支援を提供
 クロスフィールズ人財研究所では、主に地元・熊本県の企業に対して、助成金申請や関連するコンサルティング業務、就業規則作成や改定、給与計算、労働トラブルの相談、労働保険と社会保険の手続き代行など、社会保険労務士業務全般を提供しています。
 特に注力している業界が、医療介護業界です。少子高齢化の影響が大きい地方都市では、医療介護の事業所が増加しており、それに伴い顧問や就業規則の作成、助成金申請などの需要が高まっています。しかし医療や介護は、特殊であり、難易度の高い分野です。社労士の専門知識だけでなく、医療であれば医療法や医師法、介護であれば介護保険法や老人福祉法、高齢者住まい法などの法律を知っていなければ、適切な支援はできないと考えています。
 税理士や社労士では特定の分野を得意とする、いわゆる「特化型」の事務所が増えていますが、特化する業界の法律を熟知することによって、経営者との意思疎通を円滑にし、問題点を見極め、解決策を講じることが可能になります。当所は医療や介護の法律を押さえた上で、労務関連の専門性を発揮し、今では医療介護関連の業務が約6割を占めています。
 元来、介護保険法に基づく申請(訪問介護、訪問看護、デイサービスなど)は、社労士の独占業務のはずですが、15年前に介護保険制度が施行されてから行政書士が申請業務の多くを担ってきました。しかし、近年になり介護の労務管理やコンプライアンスの問題が次々と起こり、行政側は労務管理を専門とする社労士が申請業務を担うべきであるという考えに変わりつつあります。
 そうした流れの中、私は一般社団法人 医療介護経営研究会を立ち上げて代表理事に就任し、全国の意欲的な社労士が介護事業所を支援できる体制作りを進めています。現在、社労士の多くは、法律によって独占が許されている労働保険と社会保険の手続き業務をメインに行っていますが、それだけでは今後成り立たなくなるかもしれません。マイナンバー制度とセットで電子申請も促進されることによって手続き業務が電子化され、手続きに関して社労士の仕事がなくなる可能性が高いからです。社労士は新たなサービスや事業分野を切り拓いていかなければ生き残ることはできない時代が迫っていると言えます。
マイナンバーでは3者の連携が鍵
奉行シリーズは安心・安全面で優位
 マイナンバー制度のスタートも社労士にとって新たな事業機会の創出につながります。忘れてはならないのは、今回の制度の根幹が、「税」と「社会保障」に関する改革であることです。さらに「電子化」して管理するということも大きな課題になっています。すなわち、それぞれの項目の鍵を握る「税理士」と「社労士」、そして「システム」の連携が、実は今回の一大改革に隠された最大のテーマの一つであることを認識する必要があります。
 例えば今回は税金に関する書類と社会保障に関する書類に同じ番号(マイナンバー)が付与されますが、税理士と社労士の業務は法律で明確に区分されているため、社労士だけ、もしくは税理士だけでは業務上扱えない領域が発生し、支障が出るケースが必ず出てきます。
 当所では早くからその点に着目し、税理士との連携に注力しています。適切なシステムの選別にも力を入れ、複数の選択肢を顧客に提示し、その活用を促しています。その選択肢の中には、給与奉行や人事奉行、就業奉行、法定調書奉行などの奉行シリーズも入っています。奉行シリーズの長所はソフトやサービスの信頼性やセキュリティが高いこと、サポート体制が優れていることです。マイナンバー制度に伴うシステム活用で最も重要なことは、安心・安全の確保です。奉行シリーズはセキュリティの水準が高く、我々の顧客にも最適な選択肢の一つとして提案できるシステムであると考えています。
 社労士にも、税理士にも言えることですが、自分の業法の枠を超えて、いかにして「橋渡し役」を担い、ワンストップで適切なサービスを提供できるかが、今回のマイナンバー制度対応の鍵であり、同時に中堅・中小企業は、橋渡し役を担える社労士や税理士の支援を受けることが、難局を乗り切るポイントとなるはずです。
「心の病」への関心がより高まる
安全衛生管理体制の強化が課題
 一方、ストレスチェック制度については、改めて社内の安全衛生管理体制を見直し、整備することが必要です。中堅・中小企業は従業員の怪我や病気などにはできる限りの対応を行ってきましたが、メンタル面に対してはそれほど力を入れてこなかったというのが実情です。近年は会社側が従業員のメンタル面をサポートすべきであるという考えが主流です。また、2014年度は仕事のストレスなどで「心の病」を患い、労働災害(労災)と認定された人が、過去最多を記録しています。ストレスチェック制度のスタートによって、「心の病」への関心がさらに高まることは間違いありません。経営者は使用者責任や安全配慮義務について学び直すとともに、労災認定の状況や判例に関しても、社労士などと話し合って情報を得るべきです。
 従業員向けのメンタル問題に関する教育も力を入れていくべき課題です。中堅・中小企業は予算を組むことが難しい場合もあると思います。そうであれば、eラーニングを活用するなど、低予算で教育するツールもあります。ストレスチェック制度の導入以降は、行政側が社員教育に対して助成金を手厚くする可能性が高く、助成金を活用した教育体制の整備も視野に入ってくるかもしれません。あらゆる可能性を検討し、安全衛生管理体制の強化に取り組むことが、これからの大きな課題になるでしょう。
社労士事務所を選ぶ2つの条件
全国の社労士と地方活性化を担う
 今後、中堅・中小企業にとっては、税理士や社労士など、社外のパートナーの選別がより重要になってきます。事業環境の変化や法改正、新制度の導入が相次ぐ中、確かな専門性とノウハウ、的確な助言が会社の将来性を左右するからです。
 マイナンバー制度に関連した支援を受ける場合、社労士事務所に関して言えば、2つの条件から選ぶことがポイントです。1つはPマーク(プライバシーマーク)やISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の認証を取得していること、もう1つは、一定の組織規模で運営され、かつ税理士や弁護士など他の専門家と連携してワンストップサービスを提供できる柔軟性を持っていることです。マイナンバーのように、内閣府、総務省、国税庁、厚労省の主に4つの行政機関にまたがるような制度の場合は、特に組織的な連携ができる事務所を選択するべきでしょう。
 当所の今後の目標は、労務管理だけでなく、人材育成や教育など人事管理も担えるような体制を整えることです。社労士には地域の中堅・中小企業を今以上に支援できるポテンシャルがあると自負しています。全国の社労士とも協働しながらその活動の輪を拡げて、地方の活性化につなげていければと考えています。
Vol.40
2016年冬号
「ASOSのひろば」では、OBCが運営・管理するパートナー制度に加入するプロフェッショナルが登場! 自慢のサービスを紹介しながら、人事労務に関するトピックスを語っていただきます。

>三浦修氏
クロスフィールズ人財研究所代表
社会保険労務士
三浦 修
(みうら おさむ)
1975年生まれ。2003年に社会保険労務士試験合格後、会計事務所にて監査担当として勤務。08年に独立し、クロスフィールズ人財研究所を立ち上げた。創業・新規事業展開時の助成金支援や、医療・介護系事業所の労務管理などを専門とする。提案力No.1の社労士事務所を目指し、現在は既存事業のほか、全国でマイナンバー制度に関する講演活動を行っている。

クロスフィールズ人財研究所

●クロスフィールズ人財研究所

熊本市南区近見8-6-29
TEL:096-277-1295

医療・介護事業所を中心に社会保険・労働保険の諸手続き、給与計算等の業務を基本業務とし、労務管理・労務リスクに関するリスクマネジメントの提案を行っている。また、就業規則やルールブックを基盤として、法令遵守と企業のモラル、スタッフのモチベーションなど全体のバランスが取れる仕組み(提携講師とともに接遇研修・FP研修など福利厚生)作りの提案も行っている。また、多くの専門家とネットワークを組み、ワンストップサービスを提供している。

●奉行EXPRESS 2016年冬号より