会計ひろば2
財務のプロが存在しない現実
CFOとして意思決定を支援
 日本の中小企業やベンチャー企業が抱える課題は何でしょうか。それは、財務を担当するプロフェッショナルが社内にも社外にも存在しないことです。大企業では当たり前のようにCFOなど財務の責任者がマネジメントしています。しかし、中小・ベンチャー企業では、コスト面で人材を置くことは難しく、経営者も財務の基本をほとんど理解することなく、経営の舵取りをしています。「来月に売上げの見込みがあるから手元資金を設備投資しよう」、「資金は銀行で3年くらいの期間で借りれば何とか返せるかな」と、感覚で財務に関する意思決定を下してしまうことが多いのです。例えば飲食店であれば、最初の2店舗、3店舗は調子よく展開できるかもしれませんが、そのうち資金繰りが苦しくなり、行き詰まることになります。
 税理士事務所や会計士事務所や銀行が財務に関して的確なアドバイスができれば、そうした事態も回避できるでしょう。しかしながら、なかなか財務全般にまで支援の手が回らないのが現状ではないでしょうか。
 CFO Consulting Groupは、こうした現状に一石を投じるために、CFO(最高財務責任者)、経営参謀として、経営者のビジョンの実現を支え続けたいという思いで、設立した会社です。年間の顧問契約の中で、どのように投資し、回収し、資金調達するか。財務全般のコンサルティングを通じ、経営者の意思決定を支援します。現在、飲食業、理美容業などを中心に優良企業200社、2000店舗以上のクライアントを抱え、年間700件以上の投資・回収・調達案件をマネジメントしています。
投資・回収・調達をマネジメント
年700件の事例を基に最適解を出す
 具体的には、まず30年、50年と会社を存続させることを見すえ、ビジョン、経営計画、事業計画を、経営者とともに練ることから始めます。30年、50年の構想がなければ10年さえ存続することは難しいからです。その上で、長期計画を実現させるための3〜5年の事業計画を立て、さらに年間の事業計画も立案していきます。
 私たちはその過程で、経営の裏付けとなる財務マネジメントを支援します。簡単に言うと、資金繰りのコンサルティングをするわけです。財務における資金繰りとは、投資、回収、調達のことです。
 企業が存続し、発展するためには設備投資が必要です。ただし、企業経営の失敗の多くが、この設備投資の失敗によるものです。投資の失敗が続くと、倒産してしまうわけです。飲食店で存続できないのは、商品力や商売のやり方ではなく、この設備投資(出店)に原因があることが多いのです。従って、設備投資のマネジメントは非常に重要です。
 一方、回収も計画的に考える必要があります。飲食業であれば、店舗利益20%以上、損益分岐点は家賃の5倍以内、F/L(食材費・人件費)管理は55%以内、投資回収3年以内(最初は1年以内を目指す)などが回収力の高い会社の目安です。中小・ベンチャー企業でこうしたバランスシートを綿密に考えている会社は少ないでしょう。
 さらに、資金調達も大切な財務上のポイントです。投資回収に失敗しても、資金調達が何とか上手く行けば、倒産を回避できる可能性があるからです。逆に投資回収できても資金調達に失敗すれば、倒産してしまう場合もあります。
 ここでも飲食店を例に見てみましょう。出店時の設備資金を7年以上調達できる、月商の2〜3か月分の運転資金が5年以上調達できる、3期で1億の調達力を持つ(借入期間7年以上)、5期で5億の調達力を持つ(同)などが、調達力の高い会社といえるでしょう。
 調達では、金融機関を単なる借入先ではなく、応援者、味方と考えることも重要です。経営者は金融機関にビジョンや事業計画をプレゼンし、予実管理も含めて確率の高い数字をディスクローズして、会社を資金面でサポートしてもらうわけです。その際、応援者は多いほどいい。信用金庫、地銀、都市銀行など複数の金融機関と取引し、調達先を分散します。リスクヘッジの観点から不可欠なアプローチです。
 私たちは、ビジョンに対する資金繰りに関して、個々の会社に最適なプランを作ります。経営者のビジョンが、「3年後に年商10億円、5年後に30億円」であれば、それに向けた1年後、3年後、5年後の決算書の形を徹底的にシミュレーションします。また、投資についても色々なケースを想定し、同じようにシミュレーションしていきます。年間700件以上の事例を持ち、数々の経験を積み重ねているからこそ、様々なシミュレーションが可能であり、最適な解が出せるのです。
IT化やシステム統合をサポート
人材や海外進出も財務視点で支援
 ITに関しても、財務の視点で考えるとその有効性は明らかです。IT化では、会社が大きくなっていくプロセスで、業界、業種、ステージに応じて、セオリーがあります。飲食業であれば、まず重要なのがレジ金の管理であり、人の目のチェックに限界があることから、最初はPOSなどの販売管理システムを導入するようになります。また、その先には仕入・支払があるため、受発注管理システムも導入します。さらに、経営サイドから見れば、銀行への支払い、給与の振込などの業務もIT化が必要となってきます。つまり、資金を正確かつスピーディーにマネジメントするために、ITは最適であり、経理の手間や人件費を考えても、投資対効果の高いツールだといえます。ですが、ソフトウェアのメーカーが異なり、統合されていないという課題を抱えている会社も少なくないでしょう。私たちは、今後、こうしたシステムの統合や、使いやすいシステムの提案にも力を入れていきます。その点、奉行シリーズは、汎用性が高いので、顧問先にも必要に応じて展開しようと考えています。
 今後は財務マネジメントという自分たちの強みを軸にしながら、新しい分野にも積極的に挑戦します。中小・ベンチャーの課題としては、財務のほかに人材の問題があります。特に飲食業やホテルで顕著なのが、ベテラン社員の処遇です。現場仕事では、給料は高くなるのに、パフォーマンスは低下していく傾向があるからです。そこで、意欲のある社員は新事業を任せ、分社化して社長に抜擢する。あるいは、優秀な社員が辞めるのを防ぐために、独立制度を設ける。要するに会社をホールディングスにして、子会社を連結するような仕組みを導入するわけです。これは財務側から人の問題を解決する一つの切口だと考えます。
 また、アジアへの進出支援も新たなテーマです。将来的に中小・ベンチャー企業も国内の事業だけでは生き残れない時代が来るでしょう。アジアでは日本食や日本文化、日本のホスピタリティに対するニーズが非常に高く、安全・安心・技術を求めています。最後の輸出物とも言われる日本の飲食業をはじめ、成功する可能性がある業種は多いと思います。2012年にはアジアで現地法人を立ち上げ、進出企業の財務面を支援していくつもりです。
Vol.24
2011年秋号
「ASOSの会計ひろば」では、OBCが運営・管理する会計人パートナー制度に加入する会計人が登場!
自慢のサービスを紹介しながら、会計・税務&奉行シリーズに関するトピックを語っていただきます。
>鈴木 大徳氏
株式会社CFO Consulting Group
代表取締役CEO

鈴木 大徳氏
(すずき ひろのり)
大学卒業後、コンサルティング会社、会計事務所を経て、その後独立。2008年に中小企業、ベンチャー企業の財務マネジメントを担うために、株式会社CFO Consulting Groupを設立し、代表取締役兼CEOに就任。当初から顧問契約の依頼が数多く寄せられ、その数は年間100件を超え、直近では月間20〜30件に上る。経営者向けセミナーの依頼も多く、多方面で活躍中。
>森田 英孝氏
税理士法人 The CFO Tax & Accounting
代表社員 税理士

森田 英孝氏
(もりた ひでたか)
1976年京都府生まれ。大学卒業後、外資系大手会計事務所に勤務し、組織再編税制や連結納税業務に従事。その後独立し、2011年4月に税理士法人 The CFO Tax & Accountingを設立し、代表社員に就任。主に法人・個人における財務及び税務支援業務を中心に従事。
オフィス

株式会社CFO Consulting Group

住所:東京都港区南青山2-6-12 アヌシー青山5A
TEL:03-6438-0157 外食ベンチャー.com

2010年は年間で700件以上の投資・事業・資金計画に参画。財務分野で業界トップクラスの実績と経験を持つコンサルティンググループ。現在、独立・創業から年商300億円規模の顧客まで、幅広く財務支援を展開。事業計画、経営計画の策定から検証及び資金調達まで、全てのステージに関わり、投資に強く、存続、成長できる企業の財務戦略をマネジメントしている。また、短期的なスポットサービスではなく、長期的視野に立って企業を支援。創業時に必要な財務戦略、年商100〜200億円企業の財務戦略、M&Aや投資など、あらゆるシーンのマネジメントを担う。

税理士法人The CFO Tax & Accounting

住所:東京都港区南青山2-7-1 ホームズ飛騨302
TEL:03-5775-2040

2011年4月に設立。CFO Consulting Groupと業務委託契約を結び、総合税務サービス、組織再編、事業再生/事業継承/国際税務のコンサルティング、企業会計支援サービスを、顧問契約企業に展開。会計支援では、記帳代行、経理の仕組みの立ち上げ、自計化、システム化などをサポートし、月次決算書関連では、事業部別、店舗別の損益からキャッシュフロー計算書まで、経営に必要な資料を正確・迅速に提供する。

●奉行EXPRESS 2012年冬号より