スペシャル・コラム:特許
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知的財産の戦略的活用―知的財産信託への期待
会社名:IPトレーディング・ジャパン株式会社
投稿者名
:梅原潤一
企業の生き残りのためには、未利用特許を活用し収益に貢献することが不可欠である。
 
知的財産の戦略的活用―知的財産信託への期待
企業の生き残りのためには、未利用特許を活用し収益に貢献することが不可欠である。このため、多くの企業は、社内に知的財産活用専門部署を設けるなどして、未利用特許の活用を図るための策を講じているが、功を奏していないのが現実である。その理由の一つとして、特許所有者と特許活用希望者との間で直接ライセンス又は売買交渉を行うことは、見方を変えれば、権利行使と権利行使に対する防御という構図に等しいため、競合関係や過去のしがらみなどの主観的な部分を排除してビジネスライクに取引を行うことが難しいという側面を挙げることができる。従って、特許を一旦第三者に譲渡し名義を書き換えることにより当事者間のしがらみを切断することが重要となってくる。これを促進する手段の一つが知的財産信託である。2003年7月8日に公表された「知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画」の趣旨に則り2003年度中に信託業法が改正されると、一般事業会社が信託業に参入することが可能となり、いろいろな企業の未利用特許を信託に蓄積してパッケージとして活用を図るニーズも生まれるであろう。これが知的財産信託であり、新聞報道によると管理信託と流動化信託の2つに分類される予定である。管理信託は、グループ企業内での知的財産の一元管理や他社の知的財産の管理代行を主目的とし、流動化信託は、企業による資金調達を主目的とする信託である。未利用特許を活用し収益に貢献するには、知的財産信託を十分に活用し、なお一層特許の流通を促進する必要がある。さもなければ、企業は、不良資産たる未利用特許を数多く抱えることにより、その財務体質を弱体化させるであろう。そして、将来、特許の流通が日常茶飯事に行われることにより、不動産取引市場に匹敵する公正な知的財産権取引市場が創設されることを願ってやまない。