スペシャル・コラム
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これからの与信管理 その1
会社名:リスクモンスター株式会社
投稿者名:ビジネス推進部 第2課 課長 大鹿 尚一
〜新会社法施行に伴う与信管理に与える影響〜
 
〜新会社法施行に伴う与信管理に与える影響〜

【イントロ】
 景気が上向いていると言われ、それを裏付けるように地価や金利の上昇が始まっています。16年ぶりといわれる上昇基調の中、新会社法が施行されました。これらが与信管理に与える影響を考えてみたいと思います。

【景気回復・金利上昇!与信管理への影響は?】
 通常、景気が良くなると倒産は減り、与信リスクも軽減すると考える方は多いと思います。確かに企業の倒産件数はピーク時の年間2万件という高水準から1万2千件まで下がっており取引先の倒産リスクは減少しています。ただし、与信リスクは変わらず存在するという事を忘れてはいけないようです。と言いますのは、景気が上向いているといって全ての産業・企業で業績が良いわけではなく、いまだ勝ち組・負け組の選別が続いているからです。

 そこへゼロ金利解除が訪れました。すると金融機関はリスクに見合った金利体制を採るようになり、経営体力や客観的評価の低い企業にとっては厳しい事になります。例えば平成18年4月以降、信用保証協会の「保証料率の弾力化」が行われているのをご存知でしょうか?平成18年4月1日申込受付分より、従来、原則一律であった保証料率(無担保保証:1.35%)を「0.5%〜2.2%」の範囲で9区分に細分化しています。これを「リスク考慮型保証料率」と言います。ましてや国際競争にさらされている民間金融機関がシビアである事は言うまでもありません。
 加えて、今回のゼロ金利解除は、もともと異常な数字であったものがやっと通常に戻り始めたという性質であり、今後も景気の回復に伴いさらに金利が上昇する事を考えておかなくてはならないでしょう。この影響を考えますと倒産件数は増えるかもしれません。

 このような背景を考慮しますと単純にマクロでの景気が良いからと言って与信リスクがそれにリンクし減少するとは言えないと思われます。

【新・会社法の影響は大会社だけではない!】
 今年5月に施行された新会社法が与信管理にもたらした影響も大きいと言えます。最低資本金制度の撤廃や必要取締役人数と監査役制限の撤廃など、言ってみれば簡単に起業できるようになりました。従来からの民事再生法などとあわせて考えますと、法律面においても元気な企業にはどんどん増えてもらい逆に元気の無い企業には退場してもらう事により新たな経済成長を期待しようとしています。

 また、新会社法による影響は大会社におけるものが特に注目されていますが、果たしてそうなのでしょうか。確かに上場会社および大会社において、内部統制システムの構築が義務化されています。そのため、大企業では内部の管理体制強化が進み、与信管理に対する意識も極めて高くなっています。
 では中堅・中小企業はどうかといえば、比較的自由を与えられる一方で、例えば会計の適正のために「会計参与」制度が設けられた(義務ではありませんが)ことを見ましても、経営のディスクローズ、つまり説明責任が強く求められるようになる可能性があります。と言いますのは、「誰でも簡単に会社が作れる」ようになりましたので、会社の信頼性を担保するために決算書公告の義務を厳密に運用してゆく事が考えられるからです。(既に平成14年の商法改正時に決算書をホームページで公告する事が可能になっています)そうなりますと、例えば、簿価でいくらいくらとされている売掛金や土地・不動産といった資産価値が本当にあるのかどうかなどもチェックされます。なかでも販売債権は流動性が高くキャッシュフローの源泉ともなりますので、きちんと回収できる見込みがあることを説明できなければ、第三者からは信用されなくなってしまいます。
 ディスクローズが推進されることにより、与信管理を含め運営上の説明責任にしっかり対応できるかどうかが、その企業の信用バロメーターとなり、それが債権者保護につながるといった意見もあります。
 結果、新会社法の影響は大会社や上場企業だけの問題では無いようです。では実際、どのように与信管理に取り組んでいけばいいのでしょうか。中堅・中小企業の場合、人間関係を軸に築いてきた取引が比較的多く見られます。それ自体は決して悪いことではないのですが、どうしても「私はこう思う」といった主観的判断に終始しがちです。経験や勘にも頼る一方で、第三者による客観的指標を上手く使うのが説明責任を果たす手段と言えます。


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