「連結って難しいし面倒だ」と思っていませんか?
会社名:株式会社プログレス・パートナーズ
投稿者名:シニア・マネージャ 木村泰士
〜少ない手間で大きなメリットを追求しないなんて、もったいない!〜
   
 
今こそ戦略会計を実施するとき!その必要性とは?

親会社がグループ会社を持つようになったのは、たとえばコスト的に有利な場所に製造会社を持ち、市場にアクセスしやすいところに販売会社を持つなど、戦略があってのことだと思います。前回、正しい意思決定を行うためには連結ベースでものを見なければならないと申し上げました。ビジネス、事業あるいは製品が、本当に伸びているか、儲かっているか。戦略は思惑通りに推進できているのか、各社単体では見えない問題がないのか。真の姿は、連結しないと見えてこないからです。連結のメリットはまさにそこにあるのであって、連結決算の開示を強制されているか否かに関わらず、企業は自らの適切な経営管理のためにこそ、連結を行うべきなのです。


しかし、連結決算を開示していない会社の方からは、よく「連結って難しいし面倒なのでしょう?重要なのはわかったけれど、大変そうだから、やっていません。強制されてないし」という声をよく聞きます。また、連結決算を開示している会社の方からも、「四半期ごとの連結決算開示以外は特に何もしていません」という声を聞くことも少なくありません。




本当に、連結は大変なのでしょうか。確かに、開示のために制度として求められている連結決算(=制度連結)は、手続きも厳格かつ複雑で、親会社も子会社も多くの作業を強いられます。しかし、経営管理のための連結(=管理連結)は、制度連結と同じように行う必要なんて、まったくないのです。であれば、得るべきメリットを、できるだけ楽に得られるように、工夫すれば良いのです。
私は、管理連結を行う上で最も重要な工夫ポイントは、以下の2点と考えています。

  • (1) スピードを重視する
  • (2) 本当に必要な情報しか集めない

連結に限らないことですが、経営管理は、スピードが命です。激動する経営環境の中では、できるだけ早く問題点を把握して対策を取らなければ、生き残っていくことはできません。半年に1回しか情報を集めなかったり、せっかく集めても何カ月も前の情報だったりするようでは、あまり役に立ちません。問題の発見が遅れ、手遅れになるかもしれないのです。少し乱暴な言い方になりますが、少々の誤差があっても構わないので、できるだけ早くかつ頻繁に、グループ各社から情報を集め、連結して分析することが、最も重要です。できれば月次、少なくとも四半期ごとには、連結での分析を行いたいところです。効率的に作業を行えるようにするためには、データの収集や対比ができる連結会計ツールを使用することも、非常に有効です。

そして、迅速かつ頻繁に情報を集めて連結するためには、連結する情報を本当に必要なものだけに絞ることが必要です。そうでなければ、親会社も子会社も、作業の負担に耐えることができなくなってしまいますから。




グループの経営管理に必要な情報は、企業によって異なります。業種によって変わるのももちろんですが、同じ業種でも、ビジネスモデルや企業の状況によっても違ってくるのです。たとえば、多くの種類の製品を製造会社から販売会社を通して販売している企業であれば、本当に儲かっているのはどの製品か、今後積極的に伸ばしていくべきなのはどの製品かに関心があるでしょうから、製品(または製品群)別に売上や利益率、在庫の情報を集め、未実現利益を消去しなければなりません。ビジネスモデルによっては、市場ごと、チャネルごとにも分析すべきでしょう。

一方で、経費や営業外損益などの情報は、勘定科目別ではなく総額を集められるだけでもまずは及第点かもしれませんし、B/Sも、キャッシュフローや運転資金、在庫、有利子負債など、企業の状況に鑑みて重点的に管理するものがあれば、関連する情報のみを集められれば合格と言って良いでしょう。初めて管理連結を行ってみる場合は、最初は重要か否かに迷う情報は一切集めないくらいの割り切りがあった方が良いと思います。

また、連結上消去する値も、制度連結のように厳密に計算する必要はありません。たとえば連結売上高の計算は、毎回各社からグループ各社向け売上金額を集めて消去しようとすると各社の負担が大きくなりますが、もしビジネスのトレンドが極端に変動しないのであれば、年度末に1度だけ各社から情報を集めて消去を行い、以後1年間は、前年度末の消去後比率(連結売上高/単純に合算した売上高)を用いて簡便に計算するといった方法でも、管理連結としては十分でしょう。

このように、その企業にとって、連結ベースで見るべき重要な情報は何で、どう工夫すれば早くて効率的かはきわめて重要です。検討・実現をお手伝いする我々の経験がもっとも活きるところでもあります。

 【製品(群)別収益管理の例】

 
製品A
製品B
製品C
合計
売上
10,000
20,000
40,000
70,000
原価
8,000
15,000
38,000
61,000
粗利益
2,000
5,000
2,000
9,000
利益率
20.0%
25.0%
5.0%
12.9%
在庫
800
2,000
6,000
8,800
回転日数
36.5
48.7
57.6
52.7

 【簡便な連結計算の例】
  (前年度(通期)の連結精算表)
 
単純合算
連結修正
連結
消去後比率
 
親会社
子会社
合計(B)
内部取引
未実現利益
(A)
(D)=(A/B)
売上高
160,000
80,000
240,000
-40,000
200,000
83.3%
原価
90,000
54,000
144,000
-40,000
8,000
112,000
77.8%
粗利益
70,000
26,000
96,000
0
-8,000
88,000
-
販管費
45,000
19,000
64,000
64,000
100.0%
営業利益
25,000
7,000
32,000
0
-8,000
24,000
-
・・・
(当年度(月次)の簡易連結)
単純合算
連結
親会社
子会社
合計(C)
(C)×(D)
売上高
14,000
6,500
20,500
17,083
原価
8,000
4,700
12,700
9,878
粗利益
6,000
1,800
7,800
7,206
販管費
3,800
1,500
5,300
5,300
営業利益
2,200
300
2,500
1,906
・・・
       



連結決算の開示を強制されていないからといって、連結は『ヒトゴト』ではありません。ただし、連結を難しく考える必要はありません。連結は、あくまで「手段」であって「目的」ではないのです。本当に欲しい情報だけを、できるだけ楽に集めて、グループ全体で勝ち組を目指しましょう。

 
 

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