昨今、原油価格や穀物相場の高騰が続いた影響で商品の値上げという苦渋の決断をする企業が多いようです。 これまでのように新聞の折込チラシなどの広告を出す余裕がなくなったあるパン屋さんは、折込チラシを一時休止し『定期的な情報発信はホームページ上で』と比較的コストのかかる新聞折込チラシからホームページへと広告手法を転換しました。 すると、1ヶ月後には新聞の折込チラシ配布時に比べ、逆に売上げが上がったそうです。 上記の例は地域密着型のパン屋さんであること、CMSによる安価なホームページ更新コストであること、フリークエントユーザーのホームページ閲覧回数向上施策が成功したこと。など、成功の要素は広告以外の部分でも多分にありますが。 このことは採用活動においても大いに参考になる事例です。 投資にリスクはつきものです。では、採用活動における投資とは、一体どのようなことなのでしょうか。 一般的には【採用活動=募集行為】という常識があります。 採用活動における投資とは『求人広告』への出稿を指しますが、求人広告は一般的な採用の常識でもあるので、リクスを考えることもなく当たり前の行為だと思われます。 しかし、この考え方での採用投資は、エンドユーザーを対象にしたマスマーケティングビジネスと全く同じ手法です。 たとえば、みなさんがスーパーマーケットを経営していたとします。 新聞折込チラシに広告を入れて、店舗にお客様を集客する。そして、自分のお店の商品を買っていただく。 この考え方となんら変わらない方法です。 もし、お店に一人も来店がなかったとしたらどうでしょうか?新聞折込チラシに使った費用は、ドブに捨てたことになります。 採用活動も全く同じことが言えます。 求人広告を出しても、エントリー(応募者)が少なくて、採用に至る人材がゼロだったとします。 この場合、求人公広告費は完全にドブに捨てたことになります。 これが、採用活動の投資リスクです。 現在、ほとんどの企業の採用予算は、母集団形成=エントリー数の確保に消化されます。 要は求人広告にほとんどの採用予算が使われているということです。 たくさんエントリーを集めようとすればするほど、当然ですが採用費はかかります。 「一定の母集団形成ができなければ採用できない」という論理です。 この考え方が間違っているわけではありません。 たしかに一定の母集団=応募者がいないと選考すらできないことも事実です。 問題は、必要とされる母集団の数です。 一般的にエントリー数に対する採用率は、1%といわれています。 つまり、残りの99%の求職者(求職予備群)は他の企業へと流れていきます。 また、この計算でいくと10名の採用に対して、1000名のエントリーが必要になる計算です。 今年の大学卒業予定者数は、約300,000人です。 もし、御社が10名の新卒採用計画があるのなら、300,000人の学生うち、1,000名のエントリーをなにがしかの媒体から集めなければならないのです。 1,000名とは、全大学卒業者数の0.3%もの学生をわが社のためにエントリーさせなければならない。 膨大な採用予算を投下し、膨大な人的工数を掛けたとしても こんなことが実際に可能なのでしょうか。 このような無理な前提で採用活動を計画する限り、 採用広告投資がすべて無駄になる企業が後を絶たないと思います。 では、求人広告費をムダにしないためには、どんな対策ができるのでしょうか。 外部の人材サービス会社に頼らず、御社でできる対策が2つあります。 ひとつは、選考のやり方を見直すことです。 現在も、ほとんどの企業では応募者を面接を通じて【選ぶ】という方法です。 まず、この面接という時間の使い方を見直します。 面接という限られた時間を【選ぶ】ためではなく、【自社を営業する】時間に変えてみるのです。 いかに、自分の会社を面接時間中に求職者にアピールするのか。 このような考え方に変えるだけでも、採用の歩留まりはかなり変わってきます。 もうひとつは、求人広告の掲載内容を見直すことです。 もし、御社の事業内容が一般的に知られていない業界や事業内容であった場合、 自社のやっていることをそのまま求人広告に掲載しても、 求職者は、御社に興味を持つ以前に、御社のことが理解できないまま、次の広告に進んでしまうでしょう。 この2つを徹底的に改善し、求職者に最適化するだけでも求人広告費の投資リスクを抑えることは可能です。
ビジャスト 西野氏のスペシャリストコラム (全2回)