スキルアップメモ 2015年冬号
■企業と社労士の付き合い方
人事 総務 労務
労務・総務業務といえば、ルーティンの手続きというイメージがありましたが、昨今はリーマンショックや終身雇用制度の崩壊などを経て、各種の手続きだけでなく、職場環境整備のためのルール作り、新型うつやストレスチェックなどの新しい制度への対応といったように労務・総務業務も変化してきています。

労務・総務業務での困りごとは社労士に相談
労務・総務業務は直接「売上」を稼ぎ出す業務ではありませんが、ここが揺らぐと企業全体にじわじわと影響を及ぼし、最終的には職場環境が劣悪となり、人材が集まらず、売上も落ちブラック企業へ一直線という事態をも招きかねません。企業には様々な「人」がいて、ケースバイケースで対応しなければならないことや、また、法改正により今まで行ってきた手続きが変更となったり、手続きそのものが増えたりすることもありますが、そのような法改正情報までなかなか手が回らない現状もあります。
最近はネット環境が発達し、どんな情報も入手することが容易になりました。「知らなかった」では済まされないことが多くありますが、同時に何が正しい情報かを選択する必要もあります。企業の経営者はもちろん、労務・総務担当者、働く社員からの「どうしたらいいの?」で、困ったときは、社会保険労務士(以下、社労士)に相談してみてください。

社労士は企業に欠かせない「人」の専門家
最近は年金問題で話題となったため、年金相談のイメージが強い社労士ですが、実は「人を雇う」上での様々な問題に対応する専門家でもあるのです。

何を依頼できるのか
よく質問があるのが、「何を依頼したらいいのかわからない」ということです。大きく分けて、相談と手続き代行と2つに分かれますが、代表的な業務は以下のようになります。
人事・労務管理に関するコンサルティング業務
就業規則・賃金規定等の作成、見直し
賃金体系、定年引き上げ、再雇用などの相談、アドバイス指導
労使トラブル未然防止対策の提案
採用時の適正診断、教育・評価システムの設計
労務監査

労働・社会保険関係手続き他アウトソーシング業務
労働保険(労災保険・雇用保険)関係の手続き
社会保険(健康保険・厚生年金保険)関係の手続き
各種助成金、奨励金申請手続き
給与計算業務

実際にはどのように付き合えばよいか
まずは、何をどこまで依頼するのかによって変わってきます。相談(コンサルティング)だけ依頼したいのか、手続きだけ依頼したいのか、継続的な顧問契約を結びたいのか、例えば就業規則作成だけ(スポット契約)を依頼したいのかなどです。大抵の社労士事務所では、顧問契約でもスポット契約でも受託してもらえるはずなので、皆様の会社で一番困っていることをピックアップしていき、社内で解決できるのか、専門家に依頼した方がよいのかを検討してみてください。また、個人情報や人事評価などの情報をやり取りすることになりますので、企業側の窓口(担当者)を誰にするのか、どこまでの権限があってどんな話しをすることができるのかまで明確にしておくと、やり取りがスムーズとなります。
せっかくご依頼を頂いても、結局何から手をつけていいのかわからない、いつも担当者がおらず、話が進まない(手続きが進まない)だと、的確なアドバイスができない場合もあります。

経験豊富な社労士が問題を的確に判断
企業が社労士と連携することの大きな2つのメリットは、「他社の事例を知ることができる」ということと、「役所への対応を任せられる」ということです。
他社の事例はなかなか知る機会がありませんが、同じようなケースでどんな結果となったのかの判例や実際の相談事案など、社労士に聞くことができるため、よりリスクの少ない判断ができます。
また役所への対応は、手続きだけでなく、突然の調査やあっせん(ただし、代理人ができるのは「特定社労士」のみです)や助成金申請を含みます。手続き一つとっても、役所が何を求め、どういった資料を提出するべきなのかが分かるため、迅速な手続きが取れます。調査は、重い資料を抱え、よくわからない法律や用語を並べられ、また再度資料提出のために時間を取られるということが多く見られますが、企業担当者より社労士が行く方が、話しが早く終わることも珍しくありません。
以上をご参考に、社労士と「上手なお付き合い」をしていただき、ぜひ企業のさらなる発展と職場環境の向上につなげていただければと思います。
[監修者] OBCパートナー制度「ASOS」会員
社会保険労務士 小泉事務所・代表/特定社会保険労務士
小泉 正典(こいずみ まさのり)
専門分野は、失敗しないための人材採用・教育・人材定着のための評価・職場作りコンサルティング。『ホントにあった職場のトラブル 〜会社と社員が賢く生きるための21 の掟〜』(共著・労働新聞社)、『人事労務トラブル110番DVD vol.3出演』(日本グラフィックサービス工業会)、その他メディア掲載・セミナー・講演多数。
〒153-0051東京都目黒区上目黒2-7-4-401 TEL 03-5858-6124 FAX 03-5858-6125