スキルアップメモ 2014年秋号
■社内におけるメンタルヘルス対応
人事 総務
メンタルヘルスとは「こころの健康」です。なんとなく不調で仕事に身が入らない状況から、深刻なものとなると生命の危険を招いてしまうメンタルヘルスへの対応は、企業にとって大きなテーマとなってきています。

メンタルヘルス不全による労災請求件数が過去最高に!
2014年6月に公表された、2013年度の「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」によると、精神障害(メンタルヘルス不全)の労災請求件数は、1,409件で過去最高を記録しました。精神障害の労災認定基準が改定され、また、メンタルヘルス不全自体がクローズアップされ始めたことで請求件数が増加したものと考えられます。
メンタルヘルス不全となると、集中力、判断力が低下するため、普段では考えられないようなミスを繰り返したり、遅刻や急な当日の欠勤が増えたりし、仕事のパフォーマンスやクオリティが落ちてしまいます。すると、そのカバーを誰かが行わなくてはなりません。不調が続き長期欠勤となると、さらに他の社員の負担が増えます。欠勤から復帰したとしても、すぐに以前と同じような状況で安定した仕事が出来るというのはなかなか望めず、無理をするとまた休業を繰り返すこともあります。仕事自体は続いていますので、カバーする側も疲れきってしまい、同じ部署でメンタルヘルス不全者が続出するということも少なくありません。メンタルヘルス問題を放置しておくことは、企業にとっても、働く社員にとってもマイナスにしかなりません。メンタルヘルス不全は誰にでも起こり得ることです。だからこそ、しっかりしたメンタルヘルス対策が必要となってきます。

企業が取り組んでおきたいメンタルヘルス対策
メンタルヘルス不全になる要因は様々です。パワハラ、セクハラ、長時間労働や責任ある仕事へのプレッシャーなど仕事上でのものから、家庭内での問題、失恋、借金など個人的な問題からメンタルヘルス不全に陥ることもあります。個人的な問題については、その根本についてまで企業が立ち入ることは出来ませんが、仕事上での問題については対応が可能です。また、どんな要因であってもメンタルヘルス不全になった社員に対しての企業としての対応はしっかりしておくとよいでしょう。

●休日、残業の管理
長時間労働は労災認定基準にも該当し、メンタルヘルス不全だけでなく、心筋梗塞やくも膜下出血などの過労死を招く危険があります。業務効率を高め、不要な残業や休日出勤はしないよう、事前承認制などを導入したり、休日出勤した場合は、◯か月以内に必ず振替休日を設定、または代休取得を実行したりするなど、長時間労働にならないための管理をしていくことが求められます。また、有給休暇の取得しやすい環境作りや、計画的付与制度の活用も有効です。
●パワハラ、セクハラの防止
職場のパワハラ、セクハラは許されない行為です。就業規則で懲戒処分の対象となることを明記する、ポスターや社内イントラネットで通知するなど、社内での共通認識としましょう。
●ストレスチェック
2014年6月、改正労働安全衛生法が国会で可決され、2015年12月までにストレスチェック制度が創設されることとなりました。メンタルヘルス不全の未然防止を主な目的とし、社員自身のストレスへの気付きを促し、ストレスの原因となる職場環境の改善につなげるというもので、医師等による心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)を実施することが義務となります(※ただし、社員50人未満の事業場は当分の間は努力義務となります)。
検査結果は直接本人へ通知され、本人の同意なく企業側には提供されません。検査の結果、一定の要件に該当する社員から申し出が有った場合、医師等による面接指導を実施し、必要に応じ就業上の措置(作業の転換、労働時間の短縮等)を講ずることが義務となる制度です。
●就業規則の整備
実際にメンタルヘルス不全となり、長期欠勤することになった場合、休職規定を適用する企業がほとんどですが、休職規定自体がメンタルヘルス不全を前提にしていない場合が多く、何度も休職を繰り返す状況となっても企業として何も出来ないという(休職は復職を前提としているため、人員補充も出来ない等)相談も多く受けます。どのような状況になったら「休職」なのか、どのように回復したら「復帰」とするのか、同じ状況を繰り返した時は改めて「休職」なのか、「継続した休職」とするのか、休職しても復帰が見込めない場合はどうするのか等、明文化しておくことが大切です。
[監修者] OBCパートナー制度「ASOS」会員
社会保険労務士 小泉事務所 ・代表/特定社会保険労務士
小泉 正典(こいずみ まさのり)
専門分野は、失敗しないための人材採用・教育・人材定着のための評価・職場作りコンサルティング。『ホントにあった職場のトラブル 〜会社と社員が賢く生きるための21 の掟〜』(共著・労働新聞社)、『人事労務トラブル110番DVD vol.3出演』(日本グラフィックサービス工業会)、その他メディア掲載・セミナー・講演多数。
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