会計ひろば2
顧問先に勘定奉行の導入を促進
経営者の要望にきめ細やかに対応
 森資産会計は、所名の通り、当初は相続や贈与税など、資産家を対象とした相続対策のコンサルティングサービスを提供する事務所として開所しました。私自身が家業の不動産事業を承継し、税理士事務所と兼務で経営に当たっていたことから、土地や資産関連の相談や支援を得意としていたからです。
大手信託銀行の顧問税理士も務め、優良な資産家の相続関連の案件も多数紹介され、引き受けていました。その後は会計業務、税務業務などにも業務内容を拡大し、現在は多くの顧問先を抱え、中にはグループで売上げ規模が40億円を超える会社の経理業務も含まれます。
 こうした経理業務のアウトソーシングサービスのニーズは、今後もあり続けると思われます。非上場会社は不正の防止や従業員に給与計算を任せたくないなどの理由から、経理業務を外部委託する傾向があるからです。
 一方で自計化する顧問先も増えています。そこで、数十人規模以上の顧問先に対しては、「勘定奉行」の導入を勧めています。会計ソフトは作業効率を高くし、ミスを減らすのに効果的であり、特に勘定奉行は操作性が簡便で、使い慣れていない人でも直感的に入力したり、分析したりすることが可能だからです。
また、当所に導入している勘定奉行を使って、顧問先の試算表や部門別の売上や利益などをわかりやすくまとめて提供するサービスも行っています。要望に応じて、エクセルの表に加工して提供することもあります。単に記帳代行や記帳指導、会計ソフトの導入支援を行うだけでなく、顧問先の経営陣の要求にきめ細かく、スピーディに対応することが重要です。
経営者のよき相談相手となる
人事労務問題もセットで解決
 中堅・中小企業の問題は、日々発生するトラブルや課題について話したり、解決を依頼したりできる「よき相談相手」がいないことです。経営者は税金や会計処理だけでなく、社会保険や労働保険の手続き、人事、労務、採用、昇給・賞与などの労務、資金繰りや借入、資産運用など、様々な問題を抱えており、いずれも一筋縄ではいかないものばかりです。当所は私がファイナンシャルプランニングと不動産有効活用の知識を持ち、金融機関とのつながりもあるため、資金繰り、借入、資産運用などを一緒に解決していくことができます。
 さらに当所の特徴的な点は、社会保険労務士との共同事務所であり、労務問題の支援を得意としていることです。経理と人事や給与などの労務は密接につながっている業務であり、両方の業務に精通し、顧問先の問題をセットで解決していくことが本来の姿です。当所が経理と労務のソリューションをセットで提供できることは、他所にはない大きな強みであると自負しています。
 企業というものは、会社を立ち上げた当初、従業員数が数名のレベルでは、一般的に労務問題は大きな問題にはなりません。逆に会計や税務は会社の規模に関わらず必須業務であるため、まずは経理業務の支援を通じて顧問先との関係を築きます。いわば、当所にとって経理業務は「営業の入口」です。その後、従業員が増えていくにつれて、大小様々な人事労務問題が生じてきます。例えば、創業当時のメンバーだけに与えていた昇給や賞与の仕組みをどう解消して、給与体系の標準化や公平性を実現していくのか、残業代や通勤手当をどうするか、従業員が10人以上の会社は「就業規則」を作成し、所轄の労働基準監督署に届け出る義務があるが、その就業規則をどう作っていくかなど、会社がスケールアップしていく過程で一朝一夕では解決できない悩ましい問題が山積していきます。当所ではそれらをワンストップでシームレスに支援し、解決に導くことができます。
難題である就業規則の作成も支援
社員採用では2つのテストが有効
 就業規則であれば、「コストを削減しつつ従業員にはたくさん働いてほしい」という経営者の想いを汲み取ると同時に、従業員も納得させなければならないという、ある意味「二律背反」のことを何とか解決するものである必要があります。長年の実績をもとに、それぞれの会社のカラーを就業規則に上手く落とし込んでいけることも、当所が多数の顧問先から支持され、信頼される理由と言えます。
 伸び盛りのベンチャー企業ほど人事労務問題の解決がおろそかになり、追いついていないのが実情ですが、従業員は労働法によって手厚く守られているという認識が必要です。何か問題が発生する前に、当所のような事務所の支援を受けながら必要なルールを整備していくとともに、経営者自身も労働法についての知識を身に付けていくことが不可欠です。
 人事では、採用の問題も悩みのひとつのはずです。せっかく雇用した従業員が会社のカラーに合わなかったり、すぐに辞めてしまったりするのでは会社の成長は望めません。現にそうした雇用問題を抱える会社は多くなっています。
 問題を未然にできる限り最小化するために当所が勧めているのが、採用で「YG性格検査」と「クレペリン検査」の2つを実施することです。「YG性格検査」とは、質問紙形式の性格検査の一種で、「クレペリン検査」とは、ぎっしりと書かれた数字を順番に足していくだけの単純なテストです。採用候補者の能力の高さを見定める目安となり、いずれも大企業では入社試験で採用する会社が多く、中小・中堅企業でもこれらを組み入れることは有効です。
不動産は東京五輪前に売却
会計事務所も国際化が急務
 企業の大小にかかわらず、資産運用のアドバイスを求めたい経営者は多いでしょう。当所は不動産会社をネットワークとして持つ強みを活かし、資産運用の相談も受けています。ただし、ひとつ注意点があります。それは将来的に日本の不動産は価値が下落する可能性があるということです。2019年までは相場も上がり続けていくと思われますが、2020年の東京オリンピックが終わった後、価値が急激に下がっていくと見ています。2040年には今より人口が2000万人も減るという予測もあり、ダウントレンドは避けられないのではないでしょうか。ですから、所有不動産は2019年までに売ってしまった方がよいと私は考えています。売るタイミングはとても大事ですので、もし不要不急の不動産を抱えている場合は相談していただければと思います。
 会計事務所が生き残っていくための方策についてもひと言触れておきたいことがあります。それは会計事務所も国際化が避けられない情勢という現実です。当所でも顧問先の社長が外国籍の方であったり、従業員に多数の外国籍の方を抱えていたりするなど、国際化の波が押し寄せています。日本とは異なる他国の税制、労務などを理解していなければ対応することが難しく、外国籍の方からの様々な依頼も今後増えていくと予想され、国際化への対応も、税理士や会計士にとっては重要な課題のひとつであると言えます。
Vol.36
2015年冬号
「ASOSの会計ひろば」では、OBCが運営・管理する会計人パートナー制度に加入する会計人が登場!
自慢のサービスを紹介しながら、会計・税務&奉行シリーズに関するトピックを語っていただきます。

>森好伸氏
税理士
森 賀津雄
(もり かつお)
1979年早稲田大学商学部卒業。大手百貨店人事部に勤務後、84年に家業の不動産事業「森建物」(現株式会社アセットプランニング)を承継し、宅地建物取引主任者試験に合格。90年に日本FP協会のファイナンシャルプランナー(AFP)、91年に税理士登録、95年にCFP(上級ファイナンシャルプランナー)に登録。その後、CFP資格審査試験委員、東京税理士会会員研修講師などを歴任し、産能短期大学講師も務めた経験をもつ。著書に『Q&A誰でもわかる事業承継の税務』(共著、財経詳報社、1992年)、『なるほど経理』(執筆・監修、大泉書店、1998年)『個人金融商品の仕組みと税務』(共著、中央経済社2003年)などがある。また、2006年には早稲田大学大学院ファイナンス研究科を卒業しMBAでもある。

株式会社経法財研究所(長谷法律事務所内)

●森資産会計

住所:東京都品川区西五反田3-7-9 平澤三陽ビル4階
TEL:03-6417-4985

1992年に開所。不動産事業の経験を活かし、相続案件を専門的に扱う意味を込めて事務所名を「森資産会計」とした。その後、記帳指導、記帳代行、決算業務などの会計業務、節税指導、申告業務などの税務業務、給与計算業務などにも業務内容を拡大。2004年に社会保険労務士の佐々木静枝氏と共同事務所化し、現在は会計・税務に加え、労務問題の支援もワンストップで提供できる会計事務所として、他所との差別化を図っている。

●奉行EXPRESS 2015年冬号より