会計ひろば2
中国やASEANへの海外進出を支援
アジア各国間の自由貿易協定進展で経営環境は激変
 日本の中小企業がこの激動の時代にどのように生き残り、成長していけば良いか――。様々なアプローチがある中で、その一つの突破口となりうるのが、中国や東南アジア、米国などへの海外進出です。私たち出津経営プランニングでは、語学や国際税務、現地の法律、マーケットに精通するスタッフを中心に、中国の現地法人、業務提携パートナーなどとともに、今から海外に打って出ようとする日本の中堅・中小企業を支援する国際ビジネスサポートを提供しています。もちろん、業務全体の8割は、税務申告や経理・財務、経営・労務管理など税務会計事務所としての一般的な業務です。しかし、会計事務所も税務会計業務のみをしているだけでは、顧問先の支援としては充分ではありません。顧問先が抱える経営問題の解決に寄与することも重要であり、会計、税務等の法的業務の専門知識をベースに、加えて、様々なサービスを提供することがこれからの会計事務所に与えられた役割であり、その一つが国際ビジネスサポートです。
 私たちが今注目しているのが中国とASEANの動向です。かつて日本は、ASEAN最大の貿易相手国でありました。日本からASEAN各国は製品に加えて、材料、部品などを日本からの輸入して、これを使って製品化し、欧米諸国などに輸出してきました。しかし、現在では状況は変わりつつあります。大きな動きが中国の台頭です。2010年に中国とASEANがFTA(自由貿易協定)の修正議定書を締結し、ASEANと中国は段階的に貿易の自由化を進めています。当初2015年に完全自由化を目指していたが、これを一年前倒しで2014年までには中国とASEAN間の関税は完全に撤廃される予定です。これにより、両地域間のモノの流通が自由化され、中国が日本にとって代わり最大の貿易相手国になることが確実に見込まれます。
 この影響は計り知れないものがあります。例えば、中国の広東省からタイに陸路で自動車部品を輸出する場合、ベトナム、ラオスを経由しますが、従来は国境を越えるごとに税関手続きを必要とし、荷物も各国のトラックに積み替える必要がありました。これに対し、FTAで関税が撤廃され域内の運送が自由になると、トラックの積み替えも不要になり、大幅な時間とコストの削減が実現します。例えば今まで船便輸送で10日間かかっていたものが3日間で済むようになります。こうして中国とASEANの効率的なサプライチェーンが構築されると、日本からの材料や部品のASEANへの輸出が、中国の現地法人からの調達に変わることは確実な状勢にあります。日本企業が中国企業に対抗し、従来の取引を維持するためにはコスト面、納期などからの競争力が求められ、それには、現地に進出する以外に選択肢は無いとなるわけです。
移転価格税問題で技術流出が加速?
海外市場の本格的な検討が必要に
 一方、現在海外で活動する企業にとって大きな関心事である「移転価格税」の問題も、実は、中小企業に大きな影響を与える可能性があります。移転価格税とは簡単に言えば、日本企業の海外子会社が得た利益に対し、日本政府が課税できる税制です。例えばシンガポールの現地法人が同国に税金を納め、日本の本社は利益の分配を非課税の配当金として得ることができれば、日本の高い法人税を払わずに済みます。そこで日本政府は日本本社の製造ノウハウや技術供与、ブランド使用などが現地法人の利益の大きな要因であるとして、海外の現地法人の利益に対しても、日本本社に税負担を求める税制が適用されてきました。
 今、日本の多国籍企業は、この移転価格税対策として、製造拠点のある国、またはタックスヘブンの国に研究開発拠点などを国外に移す動きが顕在化してきています。工場に加えて研究開発拠点も国外移転へと加速すれば、産業の空洞化はより一層深刻となり、日本の中小製造業者にとっても大きなダメージは避けられないことになります。こうした理由からも有望な海外市場への進出は、日本の中小企業にとって避けられないテーマとなってくるでしょう。
日本の中小企業に対する信頼と期待
現地では日系大手との取引も可能に
 ただし、多くのアジア各国は外国法人に対しては不動産(工場)の所有、会社設立、貿易手続き、決済等の為替手続き、営業許可申請等などの許認可制度が複雑で、多くの制限が設けられています。税制、会社法も日本とは異なり、日本の常識で進出すると大きく躓くことにもなります。出津経営プランニングでは各国の税制や法律、マーケティング、現地の特殊な事情などの知識やノウハウを基に、多くの実績を上げてきており、様々な業種に対するサポートが可能です。
 一方では、中小企業が現地に進出して、果たして事業が成り立つのかという心配をする向きもあると思いますが、私たちの経験から言えることは、現地に進出している欧米企業や日系企業、地元企業が抱いている日本の中小企業に対する信頼度は非常に高く、強く、可能性は充分にあることも事実ということです。
 これは実際によくある話ですが、中小企業が中国や東南アジア各国に進出して、技術力や実績を示した資料やパンフレットを配布するだけで、様々な企業が関心を示し、取引交渉となるケースがあります。課題となるのは価格面ですが、これがクリアできれば数々のビジネスチャンスがあるといえます。例えば、日本国内では新規に取引することが難しい大手企業であっても、現地法人間であれば取引の実現する可能性が非常に高いのです。これは製造業に限らず、コスト面からやむを得ず品質に不安のある中国企業の製品を販売している中国に進出している日系の大手小売店でも、日本企業の現地生産した製品を求めており、そこにはチャンスが充分にあります。
ITを活用した万全のサポート体制
スピード化を図り海外企業に対抗
 進出後も私たちは万全のサポート体制を提供します。その際はITを必要に応じて活用し対応しています。中国では当所の上海オフィスで各種業務の代行も可能で、日々の売上などのデータも、インターネット回線を介して日本の事務所の方でリアルタイムでアクセスして、様々なアドバイスを提供しています。
 これらの会計業務では、優れた機能を低価格で利用できる奉行シリーズを活用しています。当所では古くから勘定奉行を導入していますが、その理由の一つは同種の会計ソフトの中で常に最先端の機能や情報が盛り込まれているからです。
 また顧問先の自計化を図る際には「奉行Jシリーズ」の導入を促しています。高い機能性に加え操作性が簡便で、中小企業の定着率が高いからです。コストも抑制でき、費用対効果が高いことも推奨するうえでのポイントとなっています。
 ITを使うメリットはなんと言っても「スピード化」です。中国や韓国企業の優位性の一つはスピードにあります。日本の中小企業もその日の情報やデータをいち早く把握し、即座に手を打つことが、それらの海外の企業に対抗するために不可欠です。
 ITの積極的な活用とともに、現地を知り、現場を知る出津経営プランニングの支援により将来の成長につなげていただければと思います。
Vol.28
2013年冬号
「ASOSの会計ひろば」では、OBCが運営・管理する会計人パートナー制度に加入する会計人が登場!
自慢のサービスを紹介しながら、会計・税務&奉行シリーズに関するトピックを語っていただきます。
>出津 平氏
出津経営プランニング
代表者・税理士
出津 平氏
(いでつ たいら)
1977年、出津税務会計事務所開所。1988年に株式会社出津経営プランニングを設立。2002年、事業再生支援協会(SRC)設立に携わり、理事長に就任。翌年の2003年には事業再生を専門的に担う米国TMAの日本支部となる「日本TMA」の設立に参加し、理事に就任する。金融業界でも注目されるJCTP(日本事業再生士)資格制度の試験委員も務める。30年超の企業経営のアドバイザー経験、数多くの業界知識をベースとした、営業現場型の事業再生を得意とする。また、中国では、現地の税務会計、会社法、労働法の専門分野で、日系企業の紛争解決、合弁、M&A、マーケティング、ビジネススキームの提案などの業務を中心に、実務家として活動する。
アクタスグループオフィス

出津経営プランニング

住所:東京都渋谷区代々木1-36-1オダカビル3階
TEL:03-3370-6120

日本・中国に、主に中小企業を中心に顧問先約400社を超える大型会計事務所。一般的な税務サービスを軸に、会計やコンサルティング、経理・会計・税務業務の人材派遣サービスを提供する。税務では国際会計基準や米国会計基準、中国会計基準にも対応することが特徴。また上海オフィスを持ち、現地の業務提携パートナーとともに、企業の中国進出に関する支援やコンサルティングサービスも展開する。一方で事業再生のプロフェショナル団体である米国TMA、その日本支部である日本TMAに加盟し、事業再生、企業再生分野でも積極的に活動。100社以上の会社の再生とM&Aの実績がある。

●奉行EXPRESS 2013年冬号より