会計ひろば2
事業再生やM&Aの実績多数
産業再生機構の経験を生かす
 株式会社なのはな会計アドバイザリーと斎藤税務会計事務所は、設立して約2年の若い事業所です。なのはな会計アドバイザリーでは、事業再生やM&Aの際の財務内容調査、再生計画、事業計画の作成支援、計画実行段階での監査役、顧問としての支援など、財務コンサルティングを中心に業務を展開し、斎藤税務会計事務所では、税務申告、相続税対策、各種団体(東京商工会議所など)での税務相談など、税理士の資格が必要な業務を提供しています。なのはな会計アドバイザリーでは、将来的に公認会計士や税理士の資格保有者だけでなく、金融機関出身者など有資格者以外の有能な人材採用の門扉を広げ、業容を拡大していきたいという考えから、株式会社として設立しました。
 私は事務所を立ち上げる前、2004年に株式会社産業再生機構に財務の専門家として入社し、医薬品、製菓、繊維等の事業を展開する大手消費財メーカーの再生計画の作成を担当しました。その後、バス、ホテル、観光事業を展開する地方の名門企業の再生計画作成や実行支援に携わる機会がある中で、地方の名門企業を担当することになりました。この案件では私が財務の責任者となり、外部の会計士と連携しながら業務を遂行しました。地方のホテルや旅館はバブル期に設備投資をし、過剰な負債を抱えているケースが多く、この名門企業もそうした問題に苦慮していました。日々の売上げや収益は着実に計上されているものの、それらが借入金や利子の返済に充てられてしまい、事業として成り立つ見込みがあるにも関わらず、経営的に苦しい状況に陥ってしまう――。このようなバブル期の後遺症に悩む企業は多く、私たちが取り組む案件の中でも多くを占めています。
 地方の観光業は、もし破綻という事態になってしまうと、雇用などその地方の経済への影響は大きく、観光地としてのイメージダウンも避けられません。そこで、私たちは中小企業再生支援協議会などの公的な機関の支援も受けつつ、弁護士やコンサルティング会社と連携して借入金の返済条件を見直したり、免除を受けたりすることによって、破綻を回避しながら、最適な提案で再生支援を行っています。
肝となる事業計画の策定と実行
経営会議制度導入もポイント
 現在は産業再生機構での経験を活かし、地方ホテルをはじめとするさまざまな再生事業に取り組んでいます。再生事業では、立て直すための事業計画の策定と実行が重要なポイントです。収支構造の見直し、借入金の返済条件の見直しを含め、新たな事業計画を策定し、実行段階では計画と実績の乖離がないかを検証。もし乖離があれば資金繰りをどのようにつないでいくかをさらに検討を重ね、実行に移していきます。
 その過程で、会社分割という手法をとることもあります。過剰な負債を抱えている企業に対し、好業績である事業とその事業の収支に見合った負債だけを切り離して新しい会社として存続させ、残りの不採算事業と過剰負債の残った会社を清算するというものです。昨今の経済情勢を背景に、こうした手法で処理する案件も増えてきています。
 また、特に中小企業や地方企業に多いのですが、オーナーがワンマンで意思決定している会社であれば、経営会議制度の導入も検討します。経営会議制度とは、幹部が出席し議論を交わすことによって従来にはないアイデアや解決策が見出すことで、結論に対する納得感が高まるなど、大きな効果が期待できます。私は産業再生機構の頃から現在に到るまで、多くの企業で監査役や取締役などの立場で経営会議に参画しました。経営状況を「外部の目」にさらすことで、それまで曖昧だった数字の報告や正確な財務状況報告が可能になります。このような会議の運営支援によって経営を組織化するのも私たちの得意とする分野です。
成り行き経営から脱却が急務
会計ソフトはコスト見直しに有効
 変化が激しいビジネス環境において、成り行きに任せた、いわゆる「成り行き経営」で収支の帳尻を合わせるのは非常に困難です。数字をしっかりと把握し、費用対効果も勘案しながら、計画や見込みに基づき、着実に意思決定していくことがもはや必須事項。大企業だけでなく、中小企業でもこうした「事業計画に基づく経営」によってリスクを最小化することが必要な時代なのです。
 事業計画の策定では、会計ソフトの活用は言うまでもありません。会計ソフトのメリットは、部門別管理、店舗別管理、前年推移、予算管理などの集計が時間をかけずに簡単にできること。企業の置かれている変化を把握し収支の改善を図っていくなど、効率的・効果的な経営管理が可能です。特に最近では売上の低下にともない、コストへの意識を高める企業が増えていますが、このコストの不要な部分を見直すのに会計ソフトは有効なツールのひとつと言えます。
 例えば、私の顧問先では、会計ソフトの費用の補助科目を細かく設定し、毎月どのような費用が発生しているのかを把握するとともに、前年比や前月比、予算比などの分析も試みています。その結果、ある月の電気代が前月比で非常に上がっていたということが分かり、調べてみると、大家が誤請求していることが発覚しました。これは分析としては安易な例かもしれませんが、会計ソフトの活用がなければ、日の目を見なかったことです。こうした人為的なミスの解消も含めて、会計ソフトによるコスト削減効果は期待できます。確かにITは初期投資やランニングコストがかかるかもしれませんが、中長期的に見ればメリットの方が上回ることは間違いないでしょう。
iASOS第1号会員として経営を支援
顧問先と共に発展する会計事務所に
 税制改正について言及すると、今年はグループ法人税制の導入が話題になっています。例えば、グループ内の100%子会社間で不動産などの資産を譲渡する場合、譲渡損益は次の資産の移転まで繰り延べられるなど、従来とは異なる税務処理が必要となる場合があります(2010年10月〜)。さらに、資本金5億円以上の大企業の100%子会社について、子会社自身が中小法人であれば従来、中小企業軽減税率等の適用が認められていましたが、今年から使えなくなっています(同4月〜)。この税務処理についても確実に対処する必要があります。
 さて、私はまだ30代前半と、60代以上の代表者が過半数を占める会計・税務事務所の中ではとてもめずらしい存在です。しかし、高度経済成長期に創業された経営者の方が事業承継の時期に差し掛かっている現在、世代交代する次代の経営者はむしろ私と年齢が近い方が多いと感じています。また、創業して間もない若いベンチャー起業家も同じくらいの年齢の方が多いでしょう。顧問先の中では、同年代で相談がしやすいこと、私が若い分、長期にわたって関係を構築できることなどの観点から、30〜40代が代表を務める会社の支援も多くなっています。
 今後は、新しいことに積極的にチャレンジしながら、顧問先の開拓や支援拡充につながればと思っています。今年6月に奉行シリーズを核にユーザーと会計・税理士事務所をつなぐOBC会計人パートナー制度「ASOS(アソス)」の奉行iシリーズ第1号会員となりましたが、それもチャレンジ精神の表れです。
 これからの会計事務所も「経営重視派」と「税務調査重視派」の二極化がますます進みます。私の事務所はもちろん前者で、中小企業にとって一番身近な経営支援者としての役割を果たしていきたいです。そのためにも、「ASOS」のようなサービスラインをより一層充実させ、志やビジョンを持った若手経営者、ベンチャー経営者などへの支援を通じて、顧問先と共に発展していけるような会計事務所でありたいと考えています。
Vol.19
2010年秋号
このコーナーでは、OBCのASOS会員である会計士・税理士といった、企業と必ず接点のある職業会計人の方を、現在のトピックを交えながら紹介していきます。
齋藤 周平
代表取締役・公認会計士・税理士
齋藤 周平
(さいとうしゅうへい)
株式会社なのはな会計アドバイザリー 斎藤税務会計事務所

●株式会社なのはな会計アドバイザリー 斎藤税務会計事務所

住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷5-15-5 DSビル704号
TEL:03-3225-56151 FAX:03-3356-7785
ホームページ:http://www.saitozeimukaikei.com/

2008年9月、株式会社なのはな会計アドバイザリーと斎藤税務会計事務所を同時に設立。前者では、主に事業再生やM&Aの際に必要な財務コンサルティングを中心にサービスを展開し、後者では、税務申告や事業承継、相続税関連などの税務業務を提供している。中小企業を中心とした企業再生案件を通じて蓄積したノウハウをベースに、地方のホテルや旅館などの再生案件、飲食業の事業承継案件、製造業の従業員による買収案件等様々な案件を手がけ、事業計画の立案、実行支援など企業のリスタートに力を注いでいる。

●奉行EXPRESS 2010年秋号より