連載企画4:これからのサーバ利用はクラウドとオンプレミスの“いいとこ取り”の使い分けが賢い
サーバのトレンドはクラウド。オンプレミスとの使い分けが加速
今、サーバのトレンドはクラウドに移行し始めています。インターネットがインフラ化し、スマートフォンやタブレット端末を使って、パソコン以外のデバイスからでも、いつでもどこからでもネットワークにアクセスできるようになりました。インターネットやモバイル型のデバイスは、ビジネスパーソンにとってはもはや必需品であり、インターネットを介してサービスを利用するクラウドは、とても使い勝手の良いものとなっているからです。
また、働き方の多様化も影響しています。自宅やカフェなど、オフィス以外の場所での業務を認める企業も増えており、場所を選ばないクラウドの利用は現代の業務スタイルに非常に柔軟に対応できるからです。今後、インターネット環境が街のどこからでもアクセスできるようになり、さらに高速化すれば、ますます働き方が変化し、クラウドの利便性はもっと高まるはずです。
クラウドを後押しした背景に、「サーバを自前で持つリスク」もクローズアップされました。震災等により社屋が倒壊した場合、サーバ自体が壊れてしまう可能性があるからです。クラウドは、堅牢なデータセンターでサーバが稼働しているため、災害などの不測の事態が起きても、業務を継続して遂行できる確率が高いと言われています。
サーバの選択肢にクラウドが台頭するようになったとは言え、もちろん視点を変えればデメリットになり得る部分もあります。そして、その弱点を埋めるのがオンプレミスです。例えば、クラウド(パブリッククラウドの場合)は、不特定多数の利用者がいるため、利用に抵抗がある企業もあるでしょう。そういった場合は、自社内の見える場所にサーバを設置して稼働させるオンプレミスが適しており、安心です。また、自社内からだけでアクセスできる環境にしたい場合や、ログ管理などサーバの管理や統制を行いたい場合にもオンプレミスが活躍します。
このように、クラウドとオンプレミスには一長一短があります。サーバ利用において、クラウドとオンプレミス、どちらか一つだけを選択する必要はありません。自社の要望に合わせて「使い分ける」ことが重要なのです。
選択の幅が広がるクラウドのサービス。オンプレミスの性能向上も見逃せない
クラウドもオンプレミスも、どちらも年々サービス内容や性能が格段に上がってきています。クラウドはサービスの幅が広がり、主流のパブリッククラウドのほか、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウドなど、柔軟な使い方に対応したサービスがありますし、部分的な利用も可能です。一方、オンプレミスも省電力や静音性などの性能がこれまで以上に向上し、高い処理能力をそのままにコンパクト化を実現しています。ここで、クラウドの形態とオンプレミスの形状、それぞれの選択ポイントを改めて確認しておきましょう。(下図参照)
■主なクラウドの形態
形態 概要 特長
パブリッククラウド データセンターに置かれたコンピュータ資源を共有し、不特定多数で共有する利用形態を言います。 自社で構築する必要がなく、最低限のコストで、インターネットを介して簡単にサービスを利用できます。
プライベートクラウド 企業内に構築したクラウドを、特定の企業やグループ内だけで利用します。 独自のシステムを構築できます。不特定多数の利用がなく、セキュリティ面でのメリットがあります。
ハイブリッドクラウド パブリッククラウドとプライベートクラウドを併用する形態です。 処理する内容によって、使い分けができるクラウドの形態です。
ポイント

■主なオンプレミスの形状
形状 概要 特長
タワー型(タワーサーバ)
タワーサーバ
小型のものが多く、小規模オフィスにも設置しやすい形状です。 初めてオンプレミスのサーバを使う場合でも運用しやすいシステム設計です。
ラック型(ラックサーバ)
ラックサーバ
平たい形をしたサーバを専用ラックに重ねていくため、複数台でも効率よく収納できます。 オンプレミスのサーバが増えてきたり、今後増やす予定がある企業に便利です。
ブレード型(ブレードサーバ)
ブレードサーバ
電源、インターフェースなどを共有し、維持費削減、部品交換などを容易化できます。 より多くのオンプレミスのサーバを使い、大量データを高速で処理する企業に適しています。
ポイント
サーバを利用して何をするのか。目的と自社の方針、体制を明確に
クラウドとオンプレミス、どちらを選ぶのが賢いのかを問う前に、まずは「サーバを利用して何をするのか」、目的をしっかりと持つ必要があります。なぜサーバを導入するのか、サーバを利用して何をするのか、サーバで基幹業務システムを動かすのか、それともアプリケーションを部分的に動かすのか、サーバを活用して将来的にどのようなことを実現したいのかといった展望が非常に重要となります。その上で、様々な条件とクラウドとオンプレミスのそれぞれの特長や使い勝手を照らし合わせ、導入計画に入ることが成功の大きな鍵となります。
また、導入後の運用計画もしっかり立てる必要があります。サーバには必ず管理が伴います。専任者をあてるのか、他の業務を行いつつ兼任してもらうのか、担当者のサーバに対する知識はどの程度なのか、サーバにかけられる予算はどのくらいかなどもサーバ選びには重要なポイントとなります。
サーバ導入の前にチェックしておきたいこと
□ サーバ導入の目的ははっきりしているか
□ サーバを利用して何をするのか明確になっているか
□ サーバを活用した将来の展望はあるか
□ 導入・運用・維持にかかるコストは継続できるか
□ サーバを管理する担当者への教育は十分か
□ サーバを管理する体制は属人的になっていないか
□ 自社に見合ったサーバの運用計画は立てられているか
□ サーバに関する情報収集は十分か など
※以上のチェック項目は一例です。自社でチェック項目を作成し、確認していくことをおすすめします。
情報を入手して先手の攻めを。サーバの動向を把握し柔軟な対応を
サーバ導入は情報入手も重要なポイントとなります。ある企業では、「現在リリースされているサービスでは、自社の要望を満たすものはなかったが、システム会社との会話の中で新しく発売されるサービスを知り、それがまさに自社の求めるサーバだった」というエピソードもありました。有益な情報を入手できたことによって、妥協することなく自社の求めるサーバを導入でき、計画を実行することができたのです。情報を素早く手に入れ、先手の行動をとることもサーバの導入において重要な要素のひとつです。OBCでも今後、本誌やイベントを通じて継続してサーバに関する情報をご提供してまいります。

企業にとって業務の中枢を担うサーバを選ぶことはとても重要なことです。様々な角度から検証し、導入後のこともきちんと計画性を持って選ばなければなりません。連載企画を通じて、クラウドとオンプレミス、それぞれの特性を解説してきました。ビジネスにおいてなくてはならないサーバは今後、ますます充実したものになっていくはずです。自社の展望を明らかにし、サーバを使いこなしていくこと、それが自社の発展へとつながっていきます。
●奉行EXPRESS 2017年冬号より [ →目次へ戻る ]