40年ぶりの減価償却制度の大改正をご存知ですか?
会社名:京都嵯峨野税理士法人 株式会社ケイ・アイ・ティ 
投稿者名:代表社員 税理士 ITコーディネータインストラクター 布川 勝巳
〜改正がもたらす変化に対応できますか?〜
   
  Index
I. 安部内閣の狙い:国際競争力強化策
II. 平成19年度税制改正概要
III. 大改革となる減価償却制度の全貌
IV. 改正によってもたらされる変化
   
 

今こそ戦略会計を実施するとき!その必要性とは?

I. 安部内閣の狙い:国際競争力強化策

今回の税制改正の背景は、安部内閣の「経済成長なくして日本の未来なし」という政策基本方針の下、各種制度の条件を国際的に同等にすること(イコールフッティングといいます)を目的に、減価償却制度の抜本的な見直しを初めとして、(1)中小企業を支援強化するための税制が拡充され、 (2)経済活性化のための多くの経済産業関係の要望が盛り込まれました。これは、企業の国際競争力及び経済の成長力がより強化され、我が国の経済が活性化することを狙いとしています。

II. 平成19年度税制改正概要
平成19年度の税制改正の主なトピックスとして、以下の改正内容が挙げられます。概して言うと、企業経営にとって“追い風”となる改正内容が多く打ち出されているのが特徴といえましょう。

  • 減価償却制度の抜本的な見直し(後述)
  • リース会計基準の変更に伴う税制措置
  • 中小企業同族会社(資本金等が1億円以下の会社)に対する留保金課税制度が撤廃されます。
  • 実質的な一人会社(特殊支配同族会社)のオーナーへの役員給与の一部を損金不算入とする制度について、適用除外基準である基準所得金額が1,600万円(現行800万円)に引き上げられます。
  • 相続時精算課税制度について、取引相場のない株式等の贈与を受ける場合には、一定の要件を満たすときに限り、60歳以上の親からの贈与についてその適用を選択できるとともに、2,500万円の非課税枠が3,000万円に拡大されます。

 


III. 大改革となる減価償却制度の全貌

減価償却制度は大正7年の制度創設以来、約40年ぶりの大改革となり、以下のような抜本的な見直しを行っています。

  • 「残存価額」の廃止
  •  
    • 平成19年4月1日以後に取得をする減価償却資産について、現行の「残存価額」が撤廃(旧制度10%⇒新制度0%)され、法定耐用年数経過時点で、全額(100%)まで償却が可能になります。
    • なお、定率法を採用している場合には、定率法により計算した減価償却費が一定の金額を下回るときに、償却方法を定率法から定額法へ切り替えて計算することになります。これにより、定率法を採用している場合にも、耐用年数経過時点に1円(備忘価額)まで償却できることになります。(いわゆる250%定率法です)
  • 「償却可能限度額(取得価額の95%)」の廃止
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    • 旧制度では、当該減価償却資産を除却しない限り、償却可能限度額までしか償却できませんでした。
    • 平成19年4月1日以後に取得をする減価償却資産については、耐用年数経過時点に1円(備忘価額)まで償却できます。
    • 平成19年3月31日以前に取得をした減価償却資産については、償却可能限度額まで償却した事業年度等の翌事業年度以後5年間で均等償却ができます。
  • 技術進歩が著しいIT分野の法定耐用年数の短縮
    • フラットパネルディスプレイ製造設備…現行10年⇒5年に短縮
    • フラットパネル用フィルム材料製造設備…現行10年⇒5年に短縮
    • 半導体用フォトレジスト製造設備…現行8年⇒5年に短縮
  • 固定資産税の償却資産について
    • 資産課税としての性格を踏まえ、現行の評価方法が維持されます。

IV. 改正によってもたらされる変化

今回の減価償却制度の大改正により企業会計上の変化がもたらされます。
  • 設備投資の費用(資産の取得価額)を早期に償却(費用化)することが可能となります。
  • 資本コストが低下するとともに、企業会計上の「減価償却費」が増額し、利益が圧縮されますが、キャッシュフロー計算書上の「キャッシュフロー」が増加することになります。

一昔前の感が否めなかった我が国の減価償却制度が、欧米諸国のそれに近づいたといわれています。また企業の経理処理については、現実の実態に即した処理がなされることになり、実態と減価償却資産の会計処理のギャップが少なくなるといえます。制度の改正を受けて、減価償却の計算では、従来の耐用年数と償却率による「定額法」と「定率法」に加えて、新制度による「新定額法」と「新定率法」が追加されることになります。そのために、現在使用している減価償却システムの償却率等のプログラムの変更を確実に行っておく必要があります。

上記の税制改正を理解した上で、自社の経理業務にどのように生かし、どのように税務申告へ影響を与えていくのかを知っておく必要性があるのではないしょうか?また、今回の減価償却制度の改正は第一歩に過ぎません。今後の減価償却制度の展望を知っておくも企業経理により有利に生かせます。



○スペシャリスト紹介

企業の税務代行業務に加え、IT導入支援や税法研修など、会計事務所の新たな付加価値サービスを開拓。2006年3月に京都嵯峨野税理士法人を設立、経営コンサルティングを通して、経営課題の解決支援を行っている。また、経済産業省推進資格であるITコーディネータを養成する公認インストラクターも務め、経営を支援する多くの人材を輩出している。

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