スペシャル・コラム:税制
各分野のスペシャリストによるコラムをご紹介します。
 
おさえておきたい消費税の改正点 その6
会社名:(株)東京ファイナンシャルプランナーズ
投稿者名:税理士  取締役 鈴木 寛
今後検討がなされるべきであろう課題

平成15年度税制改正により、益税といわれる部分の縮減について対処がなされましたが、消費税には他にも次のような論点があります。
 
課税売上割合95%以上全額控除の問題
消費税の計算上、売上に係る消費税から控除する仕入等に係る消費税は、原則として、課税売上割合(売上のうち消費税の課税対象となる売上の割合)が95%以上であれば仕入等に係る消費税の全額、95%未満であれば仕入等に係る消費税にその課税売上割合を乗じた金額となります。
実は、この便宜的に全額控除となっている95%以上の部分が、消費税の徴収機会を逸している最も大きな論点で、仮にこの95%以上の部分についても課税売上割合を乗じて控除する方法にすると、1年間で3〜4兆円の徴収増加になるとの試算もあります。因みに、今回の事業者免税点や簡易課税制度適用上限の引下げによって、増税となる部分は1年間で約5,000億円、仮に消費税を1%上げると増税となる部分は1年間で約2.5兆円といわれていますので、いかにその影響が大きいかがご理解いただけるかと思います。
 
一般消費者と事業者の消費税負担の問題
消費税は物やサービスの最終の消費者が負担します。これは大原則です。 しかし、現行の規定では、その最終消費者が一般消費者であるか事業者であるかによって負担が異なります。
例えば喫茶店で1杯500円(消費税抜き価格)のコーヒーを飲んだ場合、一般消費者は5%の25円を負担することになりますが、事業者が会議費や交際費として利用したのであれば、その25円は仕入等に係る消費税として、売上に係る消費税から控除することができます。
すなわち、現在の消費税の規定では、事業者は最終消費者でありながら消費税を負担しなくてよいケースもあるというわけです。

来年度以降、消費税の税率引上げ論議とともに、上記のような論点も検討されるかもしれませんので要注目です。