チームワークで不況を乗り切ろう!(4)

会社名
サイボウズ株式会社
投稿者名:代表取締役 青野 慶久
サイボウズ株式会社  代表取締役 青野 慶久
 
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経費削減とビジョンの実現を両立しよう


チームワークを企業成長のエンジンにしよう

このコラムを読んでいらっしゃる方は、企業の総務の責任者の方も多いと思いますので、経費削減について私が語るのは、釈迦に説法になるかもしれません。
しかし、不況の足音が迫ってくる状況の中では、「まずは経費を削減して」という課題に直面していると思いますので、最終回の今回はあえて、経費削減について書いてみたいと思います。

業績向上の方法は、当たり前といわれるかもしれませんが「売り上げの向上」と「経費の低減」の二つの組み合わせによって成し遂げられます。
原価をそのままにして売り上げを上げるには、自社で生み出す製品、サービスの価値をあげることが重要です。
しかし、いきなり「価値を上げろ」と言って上がれば、世の中の経営者は苦労しないわけで、急速に業績を上げたい場合には、通常は経費を削減することから始まります。

しかし、急激な経費削減は、成長のためのエンジンを摘み取ってしまうリスクも持っています。 たとえば、ガソリン代と人件費の削減を狙って朝礼を廃止し、現場への直行直帰を認めれば、一時的な経費削減は可能ですが、会社の方針を伝えることもできなければ、人を育てることもできません。
短期的に必要でない投資を取りやめれば、一時的にはコスト削減ができますが、将来のための研究開発はとまり、何より未来への希望に向けてがんばっている社員のモチベーションを下げてしまう結果になることは明らかです。

チームワークを発揮する組織に必要なビジョンの共有、プロの育成、役割分担などそれぞれにはコミュニケーションのコストがかかります。 しかしながら、ITの力を活用することで、同じ時間でコミュニケーションの密度を上げて倍のチームワークを発揮することは可能だと思います。

経費削減の決め手はみんなで「見える化」

サイボウズ株式会社  代表取締役 青野 慶久経費削減に絞って、そのやり方を考えてみましょう。
経費にはいくつかの分け方がありますが、ここでは一般的に「売上原価+販売費および一般管理費」を経費の定義としてみます。

すぐに思いつくのは売上原価の削減ですが、これは正直もう限界ではないでしょうか。
材料費にせよ、工賃にせよ、すでにバブル後の苦労の中で、削れる部分の見直しは済んでおり、中堅企業の中にも、製造部門の海外移転や商流の大幅な見直しを行ったところも多く、ダイナミックな削減はすでに困難な状況になっていると思います。

次に販売費ですが、これは売り上げを上げるための投資であり、これを減らすと売上高が減ってしまうので、やはり難しいです。
最後に残るのが一般管理費です。
ある教科書には、「一般に売上高に関係なく固定的にかかる費用であり減らすことは難しい」と書かれていたのですが、みなさまも同じ印象をお持ちでしょうか。

私はここにこそ、経費削減の一番の余地が眠っているのではないかと思います。
なぜなら、経費の大部分は人件費であって、これを削ることは難しくても人の効率を倍にすることはできるからです。

「そんなのきれいごとだ」とおっしゃる方がいるかもしれません。
営業マンの日報などを見れば、無駄な活動は一切やっていないように見えるので、そう思われるのですが、よく考えてみれば、ビジネスマンの一日の活動でもっとも時間を使っているのは段取りの時間です。
一説によれば、ビジネスマンの一日の時間の8割は段取りに費やしているという調査結果もあるようで、ここに経費削減の大幅な余地があると思います。

自分の行動を思い起こせばわかるのですが、一度聞いたことを忘れて確認したり、大切な書類を忘れて探し回ったり、伝えたいことが間違って伝わって手戻りが生じたり、人の一日の半分くらいはこういう無駄な動きをしているのではないでしょうか。

これらのコミュニケーションにかかる経費を削減するために、チームワーク力をアップさせるのはもっとも効率のよい解決方法です。
そして、チームワークをあげるためにもっとも効果的なITツールは、私はグループウェアだと思います。


グループウェアにはスケジュールや掲示板、ワークフローや報告書といったさまざまな機能が搭載されていますが、これらを使うことで、「コミュニケーションロスの低減」が達成されます。

たとえば、先のガソリン代の節約の例でいけば、いつでもどこからでもつなげる電子掲示板や電子報告書を導入することで、経費削減と将来への人材育成、経営方針の伝達の両方が可能になります。
サイボウズでは、営業部をはじめとしていろんな部の特に若手社員の日報を、掲示板に掲載する文化があります。
パートナー様の営業の方が帰ってこられるのは大抵夕方になりますから、パートナー様を担当している営業の出番はここから。各拠点での勉強会や販売促進のご提案を終えて、帰社するのは時には夜8時くらいになることも珍しくはありません。

そんなときにマネージャーはお客様との懇親に出かけていたりして、報告が後回しになることは少なくなく、掲示板の日報は、夜や翌朝に上司、先輩と部下がコミュニケーションするためのツールとして活躍しています。

サイボウズ株式会社  代表取締役 青野 慶久そして、掲示板に日報を書くことは、他のメンバーにも情報公開することになり、単なる時間の節約以上の効果をもたらしています。
日報を書く掲示板は、アクセス権はかかっておらず社員全員が見ることができます。
日ごろはお客様と接することがない開発部門やマーケティング部門の社員も日報を見ることができますから、お客様やパートナー様と接している社員の商談の様子や提案やご意見が生のまま掲載されている日報はとても重要な情報源になるのです。

日報を見たほかの部のメンバーが、翌日営業メンバーを捕まえて、商談内容やそこで出た機能要望について、詳しく聞いている姿は、サイボウズ内では日常の風景になっています。
もちろん私も時間がある限り、彼らの生の声を聞いて、必要があればその場で突っ込んでコメント返すようにしています。

このほかにも、グループで一週間を一覧できるスケジュールを見ることで、マネージャーは社員の業務の偏りを把握し、適正な人員配置に活用したり、「プロジェクト管理」を活用して、部門横断的なプロジェクトについてのコミュニケーションやデータの共有を行って、情報共有を綿密に行ったり、Webデータベースソフトである「デヂエ」を活用して、問い合わせのデータベースを作成し、お客様への対応の迅速化や、案件の把握に使ったり、さまざまなツールの組み合わせで、会社の中にずっといなくても、ほとんどの情報をいつでもどこでもとることができるようにしています。

この場合、セキュリティが不安になる方もいるかと思いますが、クライアント証明書によって、証明書の入っているパソコンからしかアクセスができない「サイボウズ リモートサービス」を使って管理し、アクセスログはもちろんきちんと記録しています。

モバイルアクセスというと、費用と構築の面倒さを心配する方もいらっしゃるかと思いますが、サイボウズが出しているサービス同士の組み合わせであるため、設定やマニュアルも簡単にして、ファイヤウォールの設定を変更せずに、ソフトウェアのインストールだけでモバイルアクセスを可
能にしています。

明るい未来をきちんと示す

このように、グループウェアを活用することで、経費削減を成し遂げながらチームワークを向上させることはできます。
しかしながら、チームワークを発揮するのは、経費削減一辺倒ではメンバーが疲弊しています。

今年、チームワークオブザイヤーを受賞した宮崎県の東国原知事は、所信表明演説の中で、宮崎県の再生の方法を「経費の削減」よりも「収入の拡大」を重視すると明言し、経費削減に努めるのはあくまで一時的なものだと位置づけています。

わかりやすい数値目標と夢のある将来像をあわせて書かれている東国原知事の「そのまんまマニフェスト」は、経費削減の後になり遂げるべき宮崎県の将来像を書いた美しく力強いビジョンです。
激変する外部環境の中で、状況に揺り動かされるメンバーを導くものは、やはり経営者やマネージャーの描く力強いビジョンだと思います。

経費削減で、短期的に目に見える成果を出しながら、筋の通った企業経営を進めるために、サイボウズのグループウェアがみなさまの会社の支援ができることを、心より願って、この連載の終わりを締めたいと思います。

お付き合いいただきまして、どうもありがとうございました。


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