経営を「見える化」して強い会社を作ろう(2)
会社名:株式会社NIコンサルティング
投稿者名:代表取締役社長 長尾一洋
〜経営の可視化は三層構造〜
 
   
 
経営の可視化は三層構造

人口減少によるマーケット縮小・人材不足時代の到来は、いつ脱却できるか分からない長期的かつ構造的な環境変化であり、この変化に適応するためには、先を見通し、足下を照らす「可視化経営」が必要となる。人口が増え、労働力が増えることを前提とした経営から脱却し、人口が減り、人材も確保しづらい時代に適応する進化が求められているのだ。  しかも、この進化には手本も正解も前例もない。時代環境の変化を自らの目でよく見て、進むべき道を自分で見つけ、自らの足で進んで行くしかないのだ。



可視化経営を実現する際に基本となるのが、可視化の三層構造である。
まず、第一階層は戦略の可視化。自社の戦略を全社員に見える形にする。次に第二階層がマネジメントの可視化。進むべき道を明らかにし、その進捗度を測る基準を全社員に徹底させる。そして第三階層が現場情報の可視化である。自社の現在位置を知るためには現場が可視化されていなければならない。戦略、マネジメント、現場の三層すべてが可視化されてこそ、企業組織が動き出す。  
戦略の可視化には、バランス・スコアカードでおなじみの戦略マップを活用する。バランス・スコアカードについては解説書もたくさん出回っているので、ここでは詳述を避けるが、戦略マップの良さは、何といっても分かりやすさだ。戦略の可視化のポイントは、自社の戦略を現場の社員にまで理解納得してもらうことにあるからだ。経営者や幹部だけが戦略を理解しているというのではなく、全社員が自社の戦略や方向性について理解していなければ、戦略実現のための知恵を全社員から引き出すことができない。
できれば、この戦略マップを、20年後の「ビジョンマップ」、3年ないし5年後の「戦略マップ」、単年度の「戦術マップ」と分けて3種類作ってみて欲しい。「ビジョンマップ」を作ることで、現状の経営資源による制約を取り払い、より戦略的な発想をすることができる。そこから、落とし込んで、3年後を描き、更にそれを単年度に落とす。単年度の「戦術マップ」は具体的だが夢がない。3年後の「戦略マップ」だとどうしても現状の延長線上になってしまう。工夫してみて欲しい。  
第二階層のマネジメントの可視化も、バランス・スコアカードのスコアカードが分かりやすくて良い。戦略マップで設定した戦略目標を実現するための指標や評価基準を決めていく。これによって、全社員が何をどこまでやれば良いのか、どこまで進んで後どれくらい進む必要があるのかを理解できるようになる。あらかじめ基準値や予算が決まっているから、現状が明らかになった時に問題が明確化される。問題が明確になることが問題意識を生み、全社員の能力やアイデアが引き出される。



そして第三階層の現場情報の可視化は、IT日報を活用して物理的に見えないはずの現場まで可視化してしまう。これができれば現在位置を常に把握することができ、環境変化にも迅速に対応できる対質を作ることができる。日々現場で起こっている想定外の事象まで吸い上げ、共有することができるから、足下が見えて、先の見えない人口減少時代を突き進んで行くことができる。



多くの企業では、この三層が可視化されていないのはもちろん、それぞれがバラバラで分断されている。戦略は立てるものの、日々のマネジメントには落ちてこない。日々変化する現場の実態が戦略構築にフィードバックされない。日常のマネジメントは十年一日が如くのマンネリとなり、各部門のマネージャーによる結果管理に終始している。バランス・スコアカードに取り組んでいる企業でも、現場情報の吸い上げが遅いためにモニタリングスピードが落ちて仮説検証が上手く回っていないことが少なくない。これだけ時代の変化が速くなると、当然企業経営のスピードも上げなければならないが、可視化経営の三層構造を整備していくことによって戦略からマネジメントそして現場のアクションまでが一気通貫につながり、組織全体が素早く動き出す。見えるから動き、動くから変化し、変化をまた可視化する。可視化経営は人間を動かす仕組みと言っても良い。 (次号へ続く)