スペシャル・コラム
 
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今そこにある危機に御社はどう対応しますか? その1
会社名:株式会社ファーイーストファイナンシャルパートナー
投稿者名:代表取締役社長 馬場 直樹
〜退職金制度が企業経営を左右する〜
 
退職金制度が企業経営を左右する
−コラムニストの紹介−
■ 株式会社ファーイーストファイナンシャルパートナー 代表取締役社長 馬場 直樹(ばば なおき)
損害保険会社の生命保険子会社設立にあわせ、損害保険代理店と業務提携。 その後、1000社の関与先を持つ税理士事務所と共同で、保険コンサルティング 会社を設立。 現在は確定拠出型年金等の導入・継続投資教育、さらには各種団体や企業の 主催するセミナーを通して年金制度導入支援に従事している



高度経済成長期以降、企業はその大小を問わず、人材を確保し長期にわたり企業に貢献をしてもらうための仕組みとして、定年退職時に一時金でお金を支払う退職金制度の導入を進めてきました。しかし昨今では退職金制度が企業経営(特に中小企業)に大きな影を落としかねない状況になってきました。

当初、退職金は定年まで会社に貢献をしてくれた従業員の功績に報いるための功労金的な役割でしたが、時代と共に賃金の後払い的な性格に変化してきました。
一方、国も税制上の恩典や補助金を給付することで、退職金制度の拡充を図ろうとし、適格企業年金制度(適年)や中小企業退職金制度(中退金)など、将来的に多額の支出を必要とする退職金の支払い原資を平準的に積み立てる仕組みを応援してきました。

しかしながら、こういった制度は経済成長が未来永劫継続し、さらに一定水準の運用利回りが確保されることが前提として組立てられていたため、バブル経済崩壊以降の超低金利時代に対応できない硬直的な制度となってしまいました。
その結果、企業は退職給付債務と言われる多額の積立不足が発生する中、退職金支払額と積立額との乖離は企業の責任で埋め合わせをする必要に迫られ、企業は多額の負債を負うこととなった訳です。
従業員一人だけの不足を埋め合わせるのではなく、何十人、何百人の不足の補填ですから、その額は半端ではないのはお分かりいただけるでしょう。

こういった状況を受け、国は推進をしてきた適年を廃止すべく、平成24年3月31日をもって税制上の恩典を止めることを決定し退職金制度は大きな転換期を迎えました。
適格企業年金制度
を導入している企業は、平成24年のタイムリミットに向けて他の制度に移行をしていく必要に迫られています。
しかしながら、保険会社・信託銀行などの売り手の考え方が先行し、本来、主体となるべく企業や従業員にとって何が良い仕組みなのかということは充分に伝えられていないのが現状ではないでしょうか。
退職金制度は長期にわたる制度維持が前提となります。いま、この機会に退職金制度を再考し業種・業態にあった制度構築を考える必要があるのではないでしょうか。
そして、この問題は大企業より中小企業にとって大きな問題です。なぜ、中小企業にとって大きな問題かといいますと、一番はその資金力の違いによる体力の差があるのではないでしょうか。中小企業における退職給付債務の存在は退職金倒産といった最悪の事態を招く可能性を含んでいます。
そういった、企業リスクを回避するためにも、経営ビジョンから来る退職金の位置づけ、効率的な積立方法確定拠出型年金制度を導入する場合に至っては従業員の投資教育など・・・・5年という残された期間でどのような仕組みを作り、維持していくのかが将来の企業経営を左右すると言っても過言ではないでしょう。

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